ILMで本当に必要なもの

Steven Murphy 2005年11月02日 08時00分

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 2000年代になって本格的に活性化し始めたエンタープライズ向けストレージ市場。あれから5年が過ぎ、ストレージベンダー各社は顧客の需要に応えるため、また自ら市場を創出するために、様々なソリューションを発表した。

 その中には、ディザスタリカバリ(災害復旧)やデータバックアップソリューションなどのように、比較的成功を収めたものもあるが、SRM(ストレージリソース管理)や仮想化など、今ひとつ波に乗り切れなかったソリューションもある。そして2004年、各ストレージベンダーは、容量とパフォーマンスを大幅に改善した次世代ストレージを発表すると共に、こうしたストレージを販売する戦略として、ILM(情報ライフサイクル管理)という新コンセップトを打ち出した。

 ILMの基本的な考え方は、頻繁にアクセスする重要なデータはパフォーマンスの高いストレージに保管し、アクセス頻度の低いデータは安価なストレージに保管するという考えだ。ILMは、ストレージベンダーによる販売戦略に過ぎないといった見方もあるが、ユーザーもこのコンセプトを理解し、実際に導入するケースも見られるようになった。

ストレージ買い替え需要の高まり

 ストレージベンダーがILMを推奨し、顧客が本格的にこうしたソリューションの導入を考えるようになった理由は明白だ。それは、ストレージの価格低下にある。ストレージ市場が活性化しはじめた2000年にストレージを購入した顧客を想定してみよう。当時の1テラバイトあたりのストレージの価格は、少なくとも1000万円となっていた。5年間の年間減価償却率20%を適用すると、会計帳簿上そのストレージの資産価値は2005年でゼロとなる。同時に、2005年には各ベンダーの無償保守期間も終了するため、そのゼロ資産に対して5年前の購入価格に基づいた15%〜20%の年間保守料を支払わなくてはならない。

 一方で、現在のストレージの市場価格は1テラバイトあたり200万円を切っており、当然ながらパフォーマンスも向上している。高い年間保守料を支払い続けるより、新規ストレージを購入する方が理にかなっていると考えるのは当然だ。その際に課題となるのが、新旧ストレージ間のデータマイグレーションとなるわけだ。

データマイグレーションで求められること

 2005年1月から2月にかけて、われわれSoftek Storage Solutionsが全米と欧州の代表的な顧客700社を対象に実施した調査から、データマイグレーションの実態や難しさが浮き彫りになった。調査によると、60%以上の顧客がデータマイグレーションにかかるコストや作業時間、アプリケーションのダウンタイムなどの問題を抱えているという結果が出た。また、移行中のデータ漏えいの恐れや、異なるストレージベンダー間における技術的整合性の問題を挙げる顧客も多かった。中には、同じベンダーのストレージでも、モデルが違えばデータ移行が困難となるケースもあった。

 往来データマイグレーションは、夜間や休日などに手作業で行うことが多かった。しかし、ビジネスのオンライン化が進むにつれ、アプリケーションを走らせているサーバは常にオンライン状態であることが求められるようになっている。Contingency Research Planningの調査によると、企業における1時間のダウンタイムでの損害は、銀行のATMで1万4500ドル、航空会社の予約で8万9500ドル、テレビショッピングで11万3000ドルなどとなっている。

 そこでSoftekでは、ダウンタイムなしにデータマイグレーションを実現するTDMF(Transparent Data Migration Facility)を提供している。これは、1997年にAT&Tがストレージの買い替えで大規模なデータ移行が必要となった時に採用された実績のあるソフトウェアだ。TDMFはボリュームレベルでのデータマイグレーションを可能にするが、SoftekではEMCと提携し、データセットレベルでのデータマイグレーションを実現するLDMF(Logical Data Migration Facility)を発表、日本でも「EMC LDMF」として10月6日より提供している。

あったら便利なソフト vs. 必ず必要なソフト

 製品やサービスが市場で受け入れられるために必要なことは一体何なのだろうか。広告費を使って大々的に宣伝し、ユーザーに製品を認知してもらうこともひとつの手だが、やはり顧客が本当に必要だと感じる製品を提供することが一番だ。

 冒頭で、今ひとつ盛り上がりに欠けるソリューションの例として、SRMや仮想化を挙げた。実はSoftekでも、SRMや仮想化ソフトウェア製品を抱えていたのだが、あまり注目されることはなかった。

 SRMソフトは、データの重要性を見極める役目を果たし、仮想化ソフトは複数にまたがる物理的なハードウェアの構成を仮想的にひとつにまとめるものだ。これらのソフトもILM実現において重要な役目を果たすが、ユーザーは「必ずしも必要なソフトウェア」とは考えていないようだ。

 一方、ダウンタイムなしにデータマイグレーションを実現するためには、どうしてもTDMFやLDMFのような専用ソフトが必要となる。データ量が現在のように多くなかった頃や、メンテナンスのためのダウンタイムは当然と考えられていた頃には、こうしたソフトウェアの需要もそれほど大きくなかった。データ移行のためにシステムを停止させ、手動で物理的にデータを動かすことも不可能ではなかったのだ。

 それが、データ量が増加し、オンラインビジネスの重要性が高まった今では、専用のソフトウェアなしにデータマイグレーションを実行することが困難となっている。ここに来てデータマイグレーションソフトが注目を集めている理由はそこにあるのだ。

データマイグレーションで考えるべきこと

 最後に、データマイグレーションが必要となった場合に考えるべきことをアドバイスしたい。それは、データマイグレーションが業務に与える影響を必ず計算することだ。システムを停止する場合、移行の時間はどれくらいなのか、その間のロスを金額に換算するとどの程度になるかを試算してみるとよい。ビジネスに与える影響が大きくないのであれば、専用ソフトを使わなくても、手動によるデータマイグレーションの実施が可能だ。ただ、手動でデータを動かす人員や手間、移行の際の相互運用性も視野に入れると、専用ソフトウェアを利用するのが賢明といえそうだ。

Steven Murphy
Softek Storage Solutionsの設立者で、社長兼最高経営責任者。同社はAmdahlの子会社として誕生し、富士通がAmdahlを買収したことで富士通の子会社となるが、2004年4月にMBOによって再び富士通から独立する。同氏は、AmdahlやMinacomの社長、Applied Digital Accessのバイスプレジデントなどを務めた。2003年には、Ernst&YoungのYoung Entrepreneur of the Yearにおいて、北カリフォルニア地域における新興ネットワークコミュニケーション部門賞を受賞した。

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