マイクロソフトは9月5日、福島県の会津大学と、同県のIT企業エフコムと共同で、福島県のIT産業の活性化に向けて連携し、IT技術者の育成とビジネスの集積を目指すことで合意した。
3者はまず、Microsoft .NETを活用できる技術者の育成に注力する。また、今後日本国内における.NETを活用した案件の受注を加速するため、蓄積したノウハウや技術の情報交換を行う「.NET研究会」を立ち上げ、国内外からの受注に対応できる仕組みを産学連携で作り上げる。
具体的な取り組みの第1弾として、2006年10月より会津大学で、エフコム、マイクロソフトの連携による「.NET公開講座」を開設する。会津大学の学生と地域のIT企業のシステムエンジニアを対象として、C#を利用したプログラミングなどの習得を目指す。定員は20名で、学生と社会人の割合をほぼ半数とする予定。マイクロソフトがカリキュラム作成において協力し、講師も派遣する。エフコムは、実践的な技術習得機会を提供するため、インターンシップや就職先として会津大学の学生を積極的に受け入れる。
また、2007年夏には、ITによる地域の活性化を考えるイベント「ITサマーキャンプ」を開催する。イベントを通して最先端のIT技術に触れる機会を提供し、ITについて研究者や企業、住民が共に考えることで、「会津のITブランド化」の実現を支援する。
2007年度以降は、福島県内のベンチャー企業や会津大学卒業生で.NETを習得しているSEを中心に、技術情報の交換を目的とした「.NET研究会(仮称)」を立ち上げる。さらには、時期や規模は未定だが、.NETの技術ノウハウが蓄積された時点で「.NET開発センター(仮称)」の設立を検討する。同センターでは、日本国内のみならず、海外からも開発案件が受託できることを目指す。
これまで、東京大学や慶応義塾大学、早稲田大学など、首都圏の大学はもちろん、広島大学、同志社大学、九州大学など、地方の大学とも連携してきたマイクロソフトだが、地域の企業も含めたパートナーシップを結ぶのは今回が初めてとなる。マイクロソフト 代表執行役社長のDarren Huston氏は、マイクロソフトの東北におけるビジネスが伸びているにも関わらず、東北地方のIT産業の市場規模そのものはここ3年で約10%減少していることを指摘し、人材育成の重要性を主張する。その中で会津大学やエフコムと連携することは、「地元企業にとって地域活性化の役目を果たすのみならず、.NET技術者を増やしたいというマイクロソフトにとっても非常に重要だ」としている。
会津大学 理事長の角山茂章氏は、「地域社会との連携は、大学のミッションのひとつでもある。わが大学では基礎としてUNIXを教えているが、世界で幅広く活躍できる学生を育てたいと感じていた。その中で、UNIXに加えてマイクロソフトの.NET技術を教えることの意味は大きい」と話す。
また、エフコム 代表取締役社長の酒井良信氏は、「ビジネスの世界でマイクロソフトの技術を避けることはできない。こういう状況下において、学生も.NET技術を習得することは大変意義のあることだ。ビジネス的に利用できるとなると、興味を持つ学生も増えるだろう」と述べた。