世界中の人が知恵を集めて作り上げる百科事典「Wikipedia」は、ユーザー参加型のコンテンツとして世界で最も成功している事例の1つと言っていいだろう。このWikipediaの創設者であるJimmy Wales氏が今、新しいプロジェクトとして検索エンジンの開発に乗り出した。
オープンソースで、世界中の開発者の協力を得て作られるというこの検索エンジン「Search Wikia」は、Googleの対抗馬となれるのだろうか。その勝算やサービスの開始時期、日本での展開などについて、Wales氏に話を聞いた。
――Search Wikiaの特徴は。
ソフトウェアの複製や修正、再配布が可能なフリーライセンスで提供します。また、検索のアルゴリズムやランキングのロジックについても公開していきます。
検索は、もはやインターネットのインフラの一部になっています。ほかのインターネットにおける機能と同じように、オープンで、透明性があり、無償のライセンスによって提供されるべきものだと考えています。
――なぜ今のタイミングで検索エンジンの開発に乗り出そうと考えたのですか。
(オープンソースの検索エンジンである)NutchやLuceneの開発にここ2年ほど携わり、ようやく十分なものになってきたと感じたからです。これらの技術を成熟させるにはサーバなどのハードウェアや、資金面での投資が必要になりますので、今がWikiaとして検索エンジンの開発に携わる最適なタイミングだと判断しました。
――GoogleやYahooは莫大なデータを処理できるサーバセンターを抱えており、ここが優れたサービスを提供する源になっています。これは今Wikiaが事業として手がけているデータホスティングとは規模が違うと思います。こういった検索エンジン用のシステムを構築し、運営する資金はどのようにして確保するのですか。
幸いなことに、Wikipediaの成功で多くの投資家が我々のプロジェクトに関心を持ってくれています。このため、潤沢な資金調達ができていますし、必要とあらばもっと多くの資金を集めることができます。初期の段階で成果が得られれば、また新たな資金を調達できるでしょう。
――サーバ資源に関して懸念はありませんか。
難しい面はいろいろあると思います。サーバの数だけでいえば、競争優位性が我々にあるとは言い切れません。ただ、どういった課題に今後直面するかは分かりませんが、解決できると信じています。
――検索のアルゴリズムを公開してしまうと、検索エンジンスパマーと呼ばれるような人たちが自分たちのサイトを意図的に上位に表示しようとするのではないですか。
コンピュータセキュリティの専門家と話をすると、物事をあいまいにしてセキュリティを確保するというのは、決して良いやり方とは言えないと言われます。今の検索エンジンは、アルゴリズムが弱いから公開しないという方法を採っているのかもしれません。
公の監視があるほうが、改善の手助けになるということが考えられます。スパマーが現れても、コミュニティがすぐにブラックリストを作成するといった措置が出てくるでしょう。課題はありますが、対応は可能だと思っています。