業界最大手のHDDメーカー、Seagate Technologyがようやく、ノートPC向けハイブリッドHDDの初回出荷を開始した。
カリフォルニア州スコッツバレーに本社を置くSeagateは米国時間10月8日、ノートPC向けハイブリッドHDD「Momentus 5400 PSD」の大量出荷を開始したと発表した。2.5インチHDDのMomentus 5400 PSDは、容量が160Gバイトで、256Mバイトのフラッシュメモリを内蔵している。Seagateによると、フラッシュチップを追加することで、ノートPCのバッテリー駆動時間を最大50%延ばせるという。
フラッシュメモリチップと磁気ハードディスクのハイブリッドHDDを市場に投入するのは、Seagateが初めてではない。たとえば、Samsungは2007年6月にハイブリッドHDDを発表している。だが、Seagateの今回の動きを受けて、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)や富士通など他の大手HDDメーカーもハイブリッドHDDの販売を開始する可能性が高い。
PC業界によるハイブリッドHDDの広範囲な採用の妨げとなりそうな懸念材料はいくつか存在する。たとえば、現在フラッシュメモリが比較的高価なこと、PC用オペレーティングシステム(OS)、特にMicrosoftの「Windows Vista」への最適化を進める必要がありそうなこと、ハイブリッドHDDを供給するメーカーが今のところ限られていることなどだ。
だが、SeagateがMomentus 5400 PSDを投入するには良いタイミングかもしれない。というのも、大手ノートPCメーカー数社が、ハイブリッドHDDを採用する意向を表明しているからだ。ハイブリッドHDDは、フラッシュメモリに一部のデータを格納することで、磁気ハードディスクのメインストレージにアクセスする頻度が減るため、データの読み出しや書き込みを高速化できるうえ、消費電力も節減できる。ハイブリッドHDDはその省電力性ゆえに、ノートPCにうってつけと言える。
Gartnerの調査担当バイスプレジデント、John Monroe氏は「不揮発性の半導体メモリとHDD技術の長所を組み合わせて利用するのは、まったく道理にかなっている」と指摘する。2つの技術を併用することで、起動時間の短縮やバッテリ駆動時間の延長といった恩恵がユーザーにもたらされることになる。
Seagateによると、Momentus 5400 PSDの位置づけは、従来型HDDの値ごろ感とフラッシュメモリの採用を両立させた主流の選択肢になるという。ソニーの「VAIO SZ650」は現在、Seagateの新しいハイブリッドHDDを搭載しており、ほかにもPCメーカー4社が契約を結んでいる。ハイブリッドHDDの販売価格は、受注量に応じて変動するものの、標準的なHDDよりも約20〜30%高くなるだろう、とSeagateは述べている。Momentus 5400 PSDは容量の異なる3モデルで販売されるが、たとえば、容量160Gバイトのモデルの価格は約130ドルだ。
だが、ハイブリッドHDDが主流のノートPC市場に定着するまで、まだ数年はかかりそうだ。Gartnerは、3〜4年後の時点で、ハイブリッドHDDを採用したノートPCはまだ全体の3分の1に達していないだろう、と予測している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ