IT予算の6割が、保守・管理に費やされる現状
ITは、70-80年代には、手組みのシステムが中心で、業務を効率化していた。次に、業務アプリケーションが登場し、部分的な最適化が実現した。しかし、90年代に入り、その問題点が顕在化し、近年では、全体最適を目指す方向になってきている。木村氏は「現状では、大きな問題として、企業がIT化のために使う予算は、その6割程度が、システムの保守、維持、管理に使われている。さらに、企業内のIT部門の業務時間は実に8割が同じく、保守などのために配分されている。規制への対応、競争力強化、顧客への対応、労働形態の変化など課題が多くなっているが、残りの2割の時間で、これらを捌いていくのはたいへんだ」と指摘する。
もうひとつの大きな問題として、情報システム開発のプロジェクトの成功率は低下しており、失敗が7割を超えている(出典:日経コンピュータ)危機的な状況にある。
「このような事態となった要因の一つは、部分最適を進めてきたことにある。部門間、アプリケーション同士の壁を打ち破ることができないでいる。問題点は増えているのにもかかわらず、その対策として、新しいシステムを導入したり、手組みシステムを採用したり、かえってサイロ化がひどくなるという悪循環さえ見られる」(木村氏)のが現状だ。
プロジェクト指向からプロセス指向への転換がキー
これらの問題を解決するための指針としては、「IT投資を実行する前に、新たなIT戦略を立てること」(同)が重要になる。そのためには「プロジェクト指向からプロセス指向への転換を行い、プロセスを中心に据えて、ビジネス部門とIT部門が協働できる共通のフレームワークと言語を提供する」(同)ことが必要だという。
まず、「サイロ化」の打破が第一歩
部分最適から全体最適に向かうには、やはり「プロセス指向への転換が鍵」(同)になるが、インフラの現状は「プロジェクト予算や担当者の主観で、エンドユーザーへのサービスレベルが左右され、高コスト構造で、可視化やガバナンスの確保が困難だ。なぜならば、アプリケーション、システムがいわゆるスパゲティー化、サイロ化しており、複雑化している」(同)からだ。
このような状況の打開策として、木村氏は「まず、既存のIT資産を、SOA(Service Oriented Architrcture)の技術により、サービスとして部品化し、業務の観点で制御して、BAM(Business Activity Management)で分析、コスト削減と管理を実行し、重複している、あるいは部分最適にしかならない要素を捕捉する」ことが重要であると話す。このように、部分最適に留まっている、サイロ化した、企業内の既存IT資産に対し、ソフトウェア・エー・ジーは「これら相互間の情報をやりとりするバスを用意しており、システムごとのデータを共有することができる」(同)。つまり、複数のシステム群が、いわば、単一のデータベースのように見えるわけだ。
SOAの効果で「部品化した資産の組み合わせでシステムの構築ができるようになり、新たな開発はしなくてすむ。コーディングなしの最適化が実現し、業務プロセスの流れを定義できる。SOAは、情報、既存資産などのすべてをサービスという形でまとめることができ、業務は統合される」。その企業のビジネスモデルに即しているのかどうか、あるいは稼働状況は正しいのかなどをリアルタイムで監視するツールも同社にはある。