ユーザーとベンダーの円滑な協調とフェーズ分けが成功への近道
経済産業省の資料などによれば「企業IT化のプロジェクトが失敗する事例では、企業側が要件定義だけしかしないで、それ以降は、請け負うベンダー側に丸投げしてしまうことが多く、ユーザー企業側が、要件定義から先の工程にも携わると、成功の確率は上がる」(同)という。木村氏は「このような場合、ユーザー企業側とベンダー側とのやり取りが少ないと、プロジェクトの成功は難しくなる。米国では概要設計の段階までは、双方が一緒になって作業を進める。国内でも、このくらいの両者の協調があれば、状況は改善される」と語る。
企業側とベンダー側が共同歩調する際の基本施策はどうあるべきか。木村氏は以下のように述べた。「当社は、さまざまな方法論を持っており、これらを企業と共有しながら、プロジェクトを進行させていきたい。かつては主流であった、ウォーターフォール型の開発より、われわれが高く評価し、提案したいのは、スパイラル型の手法だ。このやり方では、プロジェクトをフェーズ1、2、3というように分割し、フェーズは3ヶ月-数ヶ月程度の期間として、最初のフェーズで、成功のために、何が必要なのかを洗い出し、次のフェーズで、失敗の原因となりそうな要素を改善したり、追加すべき要件などを検討していく。SOA、BPM(Business Process Management)の発想では、一度定義したサービスは再利用できるため、無駄なくプロジェクトが加速される」。
IT戦略と企業戦略のマッチングが重要
木村氏は全体最適化IT戦略を作成する際のメソドロジについても紹介した。各企業は、それぞれ、差別化戦略を策定している。「それを業務目標にブレークダウンして、現場では、それに沿って、日常の業務に取り組んでいる。ベンダー側は、このような戦略についての情報も顧客企業側と共有し、統一見解をもち、さらにそれを数値化し、業務目標に比重を持たせることにより、優先順位の高低がわかる。ここで、方策として何が必要であるか、どの山に登るべきなのかが見えてくる。次に、その方策を実行する際に必要なIT技術は何が最適か、その効果はどの程度かを見極める。」(同)。木村氏は「企業の全体像を見ることが重要であり、単にITや技術だけでは、真の改善にはつながりにくい」と述べた。
また、木村氏は関連会社をも含めた全体最適化を目指す新たな動きとして、プライベートSaaSと呼ばれる取り組みを紹介した。「多数の子会社をもつ大手企業が、サービス提供会社を設立し、BPMの技術によりこれら各社ごとのサービスを切り出し、Webサービス化して、すべてのサービスは雲の向こうにあり、各社はそこから供給を受けるというような仕組みがすでにできている。そういう方向に進む際にも、当社のメソドロジーとツールで支援することができる」。