IT業界ではさまざまな方法論やツール、その他のテクニックが広く利用されている。それにもかかわらず多くのITプロジェクトが失敗に終わっており、一部の調査では70%が失敗するという報告もなされている。
プロジェクトの成功率が一向に上がらないのは、ITプロジェクトが一般に考えられているよりも複雑であり、無事に完了させづらいものであるせいかもしれない。プロジェクトとは実装に向けた工程をつなげただけのものであるという一般的な考えでは、ITプロジェクトの根底にある業務や組織、人間といった側面に十分目を向けることができない。しかし、こういった側面こそが成功を収めるうえでの鍵となるものなのである。
失敗を避けるために使われてきた従来のアプローチでは、プロジェクトの立案段階から完了に至るまでの進め方を定義、統括するための体系的なチェックリストやワークフローに依存することが一般的であった。こういった方法論は、プロジェクトチーム内の連携を強化したり、一貫性を保証したり、効率性を維持するうえで重要である。言い換えれば、プロジェクトに携わる人々の組織化を促し、彼らに共通の理解をもたらすものというわけだ。
とは言うものの、チームの組織化が重要であるからといって、それだけで成功がもたらされるわけではなく、また真の違いを生み出すビジネス価値を創出するうえでの原動力となるわけでもない。
筆者はこの問題をより深く掘り下げるために、プロジェクトにおける方法論やITガバナンスの専門家であるSteve Romero氏(同氏はプロジェクトポートフォリオ管理ソフトウェアのベンダーであるCAにおいてITガバナンスのエバンジェリストとして活動している)と意見を交換した。Romero氏は方法論の重要性を認めつつも、素晴らしいプロセスだけでは十分ではないと考えている。
洗練された組織のほとんどでは、Prince2やPMIのProject Management Body of Knowledge(PMBOK)といった方法論を用いるという、素晴らしいアプローチを採用することでITプロジェクトを管理している。しかし、こういった方法論が広く普及しているにもかかわらず、プロジェクトの成功率は相変わらず低いままとなっている。方法論に頼っているだけでプロジェクトの成功が約束されるわけではないということに組織が気付かない限り、こういった現状は変わらないだろう。
ITプロジェクトを確実に成功させるには、組織がITプロジェクトの開始から完了までを1つの完全なプロセスとして捉えるという観点に立つ必要がある。つまりこういった観点は、ビジネスニーズの洗い出しに始まり、新たなテクノロジの価値を実現するために必要となる、業務上の行為や行動への変革までを対象とするわけだ。
プロセスのフレームワーク(ITガバナンスや、プロジェクトあるいはポートフォリオの管理、プロジェクト管理の方法論、CMMI、ITILといったもの)は重要であるものの、プロジェクトの成功を保証するものではない。
現実的には、ITプロジェクトの成功には、組織改革と人間行動についてのしっかりとした理解が必要となる。
Romero氏が述べているように、従来の方法論は、プロジェクトを成功に導くうえでの基盤として必要ではあるものの、それだけで十分というわけではない。