RSA会長が語るセキュリティとクラウド移行のジレンマ - (page 3)

藤本京子(編集部)

2011-03-03 09:00

--米国政府機関がシステムの調達にあたって最初にクラウドの採用を検討するという「Cloud First」ポリシーを打ち出しているというが、これについて意見を聞きたい。

 これには大賛成だ。米国政府は現在、まるで崩れかけた橋のような古いシステムを利用している。そして今、古い橋に修理代をかけて使い続けるか、新しい橋を構築するかの分岐点に来ている。その新しい橋がクラウドインフラなのだ。

 米国政府は、コスト削減とシステムの弾力性、迅速性、生産性を向上させるためにも早い段階でクラウドに移行すべきだ。ただ問題は、移行期間中にも既存システムを使う必要があり、そのシステムをサポートするコストがかかること、また新システムを構築するためにもコストがかかることだ。いったん新システムができあがれば最終的にコスト削減につながるとわかっていても、米国の財政赤字を考えると、いかにして古いシステムをメンテナンスしつつ新システムを構築するかが大きな課題となっている。この点については、テクノロジベンダーが新システムの支払期間を引き延ばすこともできる。これはわれわれと政府が協力する上で考えるべきビジネスモデルだろう。

--もう一点、今度は英国政府の動きについて意見を聞かせてほしい。英国政府の歳出削減プログラムについてはどう考えているか。このような厳しい経済環境の中、さらに支出を絞ることは正しい判断なのだろうか。

 経済活性化のために支出を増やせば仕事が増え、税収増となり、政府赤字の克服にもつながるだろう。しかし赤字が大きすぎて金融市場の信頼も落ちている。このバランスは非常にデリケートで、どのように舵を切るべきか判断が難しいところだ。私はエコノミストではないが、このジレンマについては理解できる。

--この歳出削減プログラムによって影響を受けたITベンダーも多いというが、EMCやRSA事業部に何らかの影響はないのか。

 特に影響は受けていない。われわれの技術は、政府や企業のインフラを維持し、未来の橋を構築する鍵となるからだ。2010年度の決算の結果も良く、2011年の見通しも悪くない。

--では最後に、RSAがEMCの一部署となったわけだが、独立した企業でいるのとEMCの一部になることで何が変わるのか。

 EMCの企業管理下に置かれ官僚的な面が窮屈に感じることもあるが、EMCはわれわれがミッションを追求するための独立した立場を尊重してくれる。また、企業買収するための資金やEMCのITインフラ、人材、営業力、顧客ベースなどが活用できるといったことを考えると、EMC傘下でいることのメリットの方が大きい。

 社員にとっての機会も広がっている。EMCからRSAにやって来た社員も多いが、日本ではRSAの代表を務めていた山野修氏がEMCジャパンの代表取締役社長に就任した。彼のこれまでの功績はすばらしいが、すでにEMCでも効率性を向上させているようだ。このように人材を有効活用できることは、今回の合併で得た大きなメリットだ。

Coviello氏 Coviello氏へのインタビューは、同氏が滞在するホテルのスイートルームの一室にて行われた

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