2011年3月11日の東日本大震災からもう間もなく一年が経とうとしている。千年に一度とも言われる大震災は、日本企業の事業継続性に多くの疑問符をつけることになってしまった。こうした状況を踏まえて、インターリスク総研や伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)など24の機関が、事業継続管理(BCM)の観点から大震災を総括し、今後の事業継続管理システム(BCMS)の在り方についての提言書(PDF)をまとめている。
今回の震災は、日本の歴史上過去に例のない超広域、かつ複合的な大災害とも言われ、企業の活動に大きな影響を与えた。震災を通じて、従業員の安全確認などの緊急時対応や事業継続での日頃の“備え”が活かされた。その一方で、今までの考え方による事業継続計画(BCP)の有効性や実効性が十分ではなかったことが明らかになっている。国際的な動きとして、BCMSは国際標準化機構(ISO)による国際標準の正式発行(ISO22301)を今夏に控えている。

提言書は、企業のBCMSのさまざまな課題を浮き彫りにしたといい、既存のBCMSの取り組みに加え、企業が新たに取り組むべき事項にも触れている。提言書は(1)事業継続上判明した課題と対応策、(2)BCMの活用と具体的提言、(3)企業がBCMS上新たに取り組みを推進すべき事項――という3つの章で構成されている。
第1章では、被災事例をもとに課題と原因を考察して、危機管理対応体制やBCP、リスクアセスメントと事業インパクト分析、複合災害など8つの課題に集約した上で、課題とその原因、今後の取り組みへの提言について被災地と非被災地ごとにまとめている。
第2章では、BCMの本質に立ち返り、日本の組織がどのようにBCMに取り組めばいいのかをまとめている。第3章では、BCMの有効性を向上させ、事業継続性を本質的に高めるために、企業が新たに推進すべきBCMSの取り組みをまとめている。
第3章の中では、企業にとって事業継続や速やかな事業再開を実現するためにはBCPだけでは不十分としている。BCPを使う組織が、組織力や危機管理対応力を日頃から向上させる必要があるとし、平時から組織力を向上させる取り組みが大切として、この手法を「組織開発」と読んでいる。組織開発を通じて組織力を向上することが重要だと説明している。