ウイルス対策ソフトのなかでも「軽さ」と「検出率の高さ」に定評があるESET。同社は約2年前、シンガボールにアジアでの製品販売を拡大するための現地法人「ESET ASIA」を設立、企業向けのライセンス製品に注力している。
そのESET ASIAで2011年からCOO(最高執行責任者)を務めているEva Markova(エバ・マルコバ)氏が5月に来日した。
ESETの製品の特徴、製品戦略、国内ディストリビューターであるキヤノンITソリーションズとのパートナーシップなどについて話を聞いた。
エンタープライズ向け製品に注力
ESETは、コンシューマー向け製品としてウイルス対策ソフト「NOD 32 AntiVirus」、ファイアウォールなどを統合した統合セキュリティ製品「ESET Smart Security」を展開するスロバキアの企業だ。1987年に創業者であるピーター・パスコ氏とミロスラフ・トルンカ氏によって最初の製品が開発され、1992年に法人が設立された。
ESET ASIAでCOOを務めるEva Markova氏
「最初の製品のリリースは社会主義体制下で、コンピューティングリソースも限られていた。当時から、低スペックのPCでも機敏に動作する製品を目指しており、それが当社製品の1つの特徴になっている。また、ヒューリスティックスキャンの考え方を持ち込んだのは、現在のCEOであるリチャード・マルコだ。彼の貢献により、コードが洗練され、検出率が高く動作が軽いソフトができあがった」(マルコバ氏)
現在は180カ国以上の国・地域に製品を展開し、ユーザー数も1億ユーザーを数える。拠点としても、アルゼンチン・ブエノスアイレスやシンガポールなどの地域流通拠点のほか、サンディエゴ、モントリオール、プラハ、ブエノスアイレス、モスクワなどにマルウェア研究センターを置くなど、グローバルな研究開発ネットワークを構築している。
日本国内での展開は、キヤノンITソリーションズ(旧キヤノンシステムソリューションズ)を国内総販売代理店として2003年に開始した。「マカフィー、シマンテック、トレンドマイクロといった大手セキュリティベンダーに比べると認知度はまだまだ低い」(マルコバ氏)とするが、2012年2月には、アスキー総合研究所の調査でウイルス対策ソフト総合満足度1位になるなど、ここにきて製品への評価は定まりつつあるようだ。
実際、北米や欧州では、マカフィー、シマンテックらとシェアを分け合うまでに成長している。国内においても、法人向けライセンス製品の導入実績は、2012年2月時点で10万6000社に上るなど、SOHOからエンタープライズまで幅広く利用される製品となっている。
「法人向けについては、今年5月にSmart SecurityとNOD 32の製品名称をそれぞれ「ESET Endpoint Security」と「ESET Endpoint Antivirus」に変更し、管理機能の強化、新しい管理ツールの配布などを始めた。ESETブランドを強化し、製品シェアの拡大に比べて知名度が追いついてこなかった現在の状況を変えていきたい」(エバ氏)