現在では各種の“クラウドOS”が実用段階に入りつつあり、IaaS環境に仮想マシンを作成するための作業負担は大幅に軽減されてきている。ユーザーはシンプルなウェブインターフェースなどを使ってマウスクリックのみで必要な仮想マシンを準備し、運用管理を行うことができる。
現状のクラウドOSは基本的に仮想マシンのレベルでの対応となっており、その上で稼働するアプリケーションレベルの運用管理については従来通りの手法で行うことになる。しかし、ミドルウェアのレイヤに関しては、ある程度の標準化も可能だろう。
たとえば、データベースなどは基本的なミドルウェアとして、いわゆるLAMPサーバという形でインスタンスのインストールくらいは自動化されているものの、簡単に利用開始できるという状態ではない。
こうした状況に対し、データベースの機能もクラウドサービス化していこうという動きもある。いわば“DataBase as a Service(DBaaS)”という発想だ。具体的には、フィンランドのSkySQL ABがオープンソースソフトウェアの「MySQL」「MariaDB」をベースに提供する「SkySQL Cloud Data Suite」といった製品がある。
各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回はSkySQLで最高経営責任者(CEO)を務めるパトリック・サルナー(Patrik Sallner)氏に話を聞いた。

Patrik Sallner氏
――SkySQL Cloud Data Suiteはどういったものになるのでしょうか。
SkySQL Cloud Data Suiteは、シンプルなウェブインターフェースを介してクラウド上にデータベースを展開し、運用管理するためのオープンソースツールです。単にクラウド上の仮想サーバにMySQL/MariaDBを展開するだけなら、難しいことではありません。SkySQL Cloud Data Suiteでは、複数のデータベースインスタンスを連携させて高可用性クラスタを簡単に構築できる点がポイントとなります。
まず対応しているのはAmazonのクラウド環境、つまりAmazon Web Services(AWS)ですが、今後対応するプラットフォームは順次拡大していく計画です。具体的には、OpenStack環境やWindows Azureなどにも対応する予定です。
インターフェースはグラフィカルなウィザード形式で、Amazonのクラウドサービスを利用するために必要となるIDやパスワードの入力を除けば、4回程度のマウスクリックのみでHAクラスタを構成できます。利用可能なデータセンターが複数拠点ある場合には、地理的に分散したクラスタを構成することもできるので、クラウド上で可能な限り高い可用性を維持したいユーザーのニーズにも対応できます。
将来的には異なるクラウドプラットフォームをまたいだ構成も可能になる予定です。企業内のプライベートクラウド環境とパブリッククラウドとの間で利用すれば、オンプレミス環境からクラウド環境へのデータマイグレーションなどにも活用できるでしょう。
――SkySQLという企業について教えて下さい。
SkySQLは、MySQLの開発者であるMonty Wideniusの出資によって設立された企業です。経営陣は全員MySQL AB出身者で構成されています。設立は2年前で、当初は独自の製品は持たず、MySQLユーザー向けのサポートサービスを提供する企業としてスタートしました。
2年間で30カ国330社のユーザー企業を獲得していて、順調に成長中しています。サポートサービスを提供する中でユーザー企業から寄せられた、さまざまな要望に応えるために、最近では独自の製品開発にも注力し始めています。SkySQL Cloud Data Suiteもその一環ですね。クラウド上でデータベースをもっと使いやすく、というユーザーの声に応えるべく開発されたとも言えるでしょう。