変わりつつある次世代自動車の本命

ZDNET Japan Staff

2014-07-10 10:55

 次世代自動車の本命は、燃料電池車(水素を充填して発電しながら走る自動車)との見方が増えてきた。5年前には電気自動車(電気だけで走る自動車)が本命と見られていたが、今は、電気自動車への期待は低下しているという。楽天証券のチーフ・ストラテジスト、窪田真之氏が解説する。

(1) トヨタ自動車に追い風

 燃料電池車が本格普及するのは10年以上先だ。燃料電池車が普及する前に、まず、ハイブリッド車(電気とガソリンを両方使って走る自動車)やプラグインハイブリッド車(家庭のコンセントから充電できるハイブリッド車)が世界的に普及すると考えられる。深刻な大気汚染に苦しむ中国も、ようやくハイブリッド車の導入に前向きになってきた。

 これでホッと胸をなでおろしているのがトヨタ自動車(7203)、本田技研工業(7267)など、日本の自動車メーカーだ。ハイブリッド車の主要技術は、トヨタなど日本メーカーが独占している。

 トヨタは、ガソリンを燃料とする自動車で圧倒的な強みを持つだけに、世界を走る自動車が電気自動車に置き換わると、これまで内燃機関で培ってきた技術力が役に立たなくなってしまうところだった。ハイブリッド車から燃料電池車につながる技術開発では、トヨタは世界の先端を走っており、今のところ問題はない。

(2)次世代自動車の本命が、電気自動車から燃料電池車に代わった背景

 世界中で普及する車になるための4つの条件について、ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の現状を比較した上の表をご覧いただきたい。

 ガソリン車は、排ガスに問題あることを除けば、極めて使い勝手のいい自動車であることが分かる。燃料充填時間は数分と短く(○)、航続距離は多くのガソリン車で500キロ程度と長い(○)。ガソリンスタンドが全国に普及しており、インフラ整備も良好(○)。

 ただし、世界中に自動車があふれ、新興国で大気汚染の問題が無視できなくなった今日、排ガス(×)の問題は無視できなくなった。ガソリン車の改良版として、ハイブリッド車が有望なのは、この表からも分かる。ただし、ガソリンを使うのは同じで排ガスの評価は(△)だ。

 そこで、排ガスが出ない電気自動車に期待が集まり始めた。ところが、電気自動車には、燃料充填時間が長すぎる(高速充電でも30分)、航続距離が短かすぎる(100キロ程度)という問題があった。技術開発によって、充電時間は短縮され、航続距離は伸びるが、ガソリン車並の利便性が確保できるメドはたっていない。

 急きょ次世代自動車の本命として浮上したのが燃料電池車だ。燃料電池車は、燃料充填時間や航続距離で、ガソリン車並みの利便性が得られる。残る問題は、車両価格とインフラだ。

 トヨタが2014年度中に発売する燃料電池車は700万円程度になる見込み。販売補助金が政府から出る見込みだが、それでも高すぎて本格普及は望めない。また、燃料電池車の普及に必要な水素ステーションの整備もまだ進んでいない。

 政府は成長戦略として、燃料電池車を世界最速で普及させる方針を出している。そのために必要なインフラ整備を支援していく見込みだ。燃料電池車でも、日本が世界をリードすることを期待したい。

(3)次世代自動車関連の参考銘柄

・日本電産(6594)

 車載モーターが本格成長期に。自動車部品会社を買収し、車載事業の拡大を加速する方針。

・デンソー(6902)

 電装品で世界トップの技術力。元はトヨタ向けが主体であったが、近年はホンダや独フォルクスワーゲンなど非トヨタ向け売上が拡大し、成長をけん引。

・トヨタ自動車(7203)

 ハイブリッド車の主要技術を独占。今年度中に燃料電池車を700 万円程度で発売する予定。安全運転支援システム(危険を察知したら自動でブレーキがかかる装置など)の開発でも先行。ただし、自動運転車の開発では米グーグル社に遅れをとっている。

・本田技研工業(7267)

 2015 年にも燃料電池車を発売予定。トヨタとともに、ハイブリッド車にも積極的に取り組んでいる。

・ジーエス・ユアサコーポレーション(6674)

 リチウムイオン電池の欠点であった、充放電繰り返しによる劣化を小さくすることに成功。今後、ハイブリッド車向けで、ニッケル水素電池に代わってリチウムイオン電池の採用が増えると予想される。自動車用のリチウムイオン電池はまだ赤字だが、ビルのバックアップ電源用のリチウムイオン電池は高収益。

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