アドビシステムズは10月2日、「Microsoft PowerPoint」で作成したファイルを電子出版向けソフトウェア「Adobe Digital Publishing Suite(DPS)」に取り込む機能「DPS Export for PowerPoint」の提供を開始した。
従来、電子出版ではレイアウトソフト「Adobe InDesign」を利用する必要があった。出版社以外の一般企業では、PowerPointを使ったプレゼンテーション資料や営業資料が多く、これをそのまま利用して電子カタログを作成したいという声が企業側から上がっていた。
今回の製品は、その声を受け日本のR&Dチームが開発を担当。本社にアピールし全世界でリリースする。日本法人の社長に就任した佐分利ユージン氏が社長就任会見の中で言及した「日本発の製品が今後いくつか登場する」の該当製品第1弾となる。
企業では営業マンが客先で見せる電子カタログなどとして活用。どのページが何回閲覧されているかなどの記録が取れることから、その成果を今後の製品開発などに生かせるという。
アドビシステムズ マーケティング本部 デジタルメディア マネージャー 岩本崇氏
アドビシステムズ シニアコンピュータサイエンティスト 永易美明氏
本社CEOから評価
DPSは当初、出版社をターゲットにビジネスをスタート。現在では、一般企業のカタログ、販促ツール作成へと用途が拡大している。
「日本ではNTTドコモ、キヤノン、リコー、日産、スズキ、ソニー、富士通など採用する企業ユーザーが増加している。従来は紙によるコミュニケーションしてきた企業が、アプリケーションを使って顧客とコミュニケーションするようになってきたことで活用が広がっている」(マーケティング本部 デジタルメディア マネージャー 岩本崇氏)
その際に「出版のために最適化されたInDesignは、一般企業にとっては敷居が高い」という声が上がっていた。そこで今回、DPS Export for PowerPointが誕生した。
企業が利用する販促ツールにはPDFや「Microsoft Word」が活用されているが、「DPSの最大の特徴はインタラクティブであり、動画や音声などを交えたドキュメントにアクションを付けられる。企業が日常的に利用しているPowerPointファイルを活用することで、インタラクティブなDPSの特徴を生かせる」(シニアコンピュータサイエンティスト 永易美明氏)という理由から、PowerPointファイルからエクスポートすることとした。
エクスポートしたファイルは、PCだけでなくiPadで利用することも可能で、PCとの解像度の違いも自動的に変換し、アニメーションなどの効果も再現する。動作要件としては、OSはWindows 7/8、またEnterprise DPSアカウントが必要となる。
開発は日本のR&D部門が主導で、全世界での製品提供が決定した。
「営業部門から上がってきた、どんな企業でもInDesignを導入することは難しいという声を受け開発を決定し、できあがったコンセプトモデルを米本社のCEO(最高経営責任者)であるShamtanu Narayenにダイレクトレビューして、評価を受けて決定した。通常、日本のR&D部門は縦書き機能を開発することなどが多いが、この製品については日本主導で世界での製品提供が決まった初めてのケース」(永易氏)
NTTドコモ 法人事業部 法人ビジネス戦略部 営業企画 プロモーション担当 久保秀和氏
企業での導入メリットとして、どのページがどれだけ再生されているのかといったデータを把握できることから、営業現場での関心を測ることができる。セールスフォース・ドットコムの顧客情報管理システム(CRM)などと連携できるAPIの提供も計画しており、企業のシステムとの連携も可能だ。
早期導入企業であるNTTドコモでは、「商材が多く、その全てを営業担当者が理解し、正確にアピールすることは難しい状況となってきている。そこで紙からアプリに移行している。DPS採用を決定したのは、Androidでスムーズにプレゼンできるものを探していた時に最適なものだと判断。Android以外のマルチOS対応であり、既存コンテンツの活用などがメリットとなる」(NTTドコモ 法人事業部 法人ビジネス戦略部 営業企画 プロモーション担当 久保秀和氏)と評価している。