NECは3月7日、長岡技術科学大学の協力により、人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いた、新たなバイオメトリクス個人認証技術を開発したと発表した。
今後、同技術を重要インフラ施設の保守・管理や警備など安全や安心に関わる業務でのなりすまし防止や、無線通信・通話における内容の秘密保持、医療現場など移動中や作業中の認証、さらに、特定の人向けや特定の場面での音声ガイドサービスなどへの応用を視野に発展させ、2018年度中の実用化を目指す。
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同技術は、耳に装着したマイク一体型イヤホンを用い、耳の穴で反響したイヤホンの音をマイクから収集することで、個人特有の耳の形状によって決まる音響特性を1秒程度で瞬時に測定する。音響特性から個人の判別に有効な特徴量を抽出する独自技術により、高速かつ認証率99%以上という高精度な認証を実現しようとするもの。
認証用機器に体の一部をかざすなどの動作が不要なため、移動中や作業を実施しながらでも、マイク一体型イヤホンを装着するだけで音を聞くような自然な動作による常時認証が可能となる。
利用者に負担をかけずに音を聞くような自然な動作で常時認証を実現することで、移動や作業をしながらでも個人認証を可能にする。秘匿性を守ることができるなど、バイオメトリクス認証の活用の幅を広げることができるとしている。
新技術の特徴は以下の通り。
個人特有の聴覚器官の音響特性を瞬時かつ安定的に測定
マイク一体型イヤホンを用いて、イヤホンのスピーカから数100ミリ秒の音響信号を出力し、耳の中を伝搬した音響信号をマイクで受信。複数回の受信信号の波形を加算し平均を取る同期加算法を用いて受信信号に含まれる雑音の影響を排除し、耳の中で音がどのように響くか(音響特性)を算出する。これらにより、個人特有の音響特性を瞬時(1秒以内)かつ安定的に測定できる。
音響特性の測定イメージ(NEC提供)
人の聴覚器官の構造を考慮した特徴量を抽出し、高精度認証を実現
NECの顔認証や指紋認証、バイオメトリクス認識技術をベースに、音響特性から特徴量を抽出する。耳の各部のサイズや形状は人によって異なるため、この特徴量が個人の判別に有効な要素となる。
一般に音響信号は外耳道から鼓膜に達し、さらに中耳、内耳へと進む。特に、外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる信号成分と、鼓膜を通過してさらに奥で反射して返ってくる信号成分が重要であることが実験の結果から分かった。
同技術は、これら2種類の信号成分に対応する周波数帯を含む少数の特徴量を抽出する。この特徴量により、少ない計算量での動作が可能になるとともに、外的環境の影響を排除することで、安定して99%以上の認証を実現するとしている。
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個人によって異なる耳穴の音響特性(NEC提供)