階層型の保護対策が重要--生体認証がモバイルセキュリティの核に:RSA幹部

鈴木恭子 2016年02月05日 19時26分

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 EMCジャパンのセキュリティ事業部門であるRSA事業本部は2月5日、「高まる商用サイトの危険性と生体認証の可能性」と題した報道機関向け説明会を開催した。米RSAで不正およびリスク・インテリジェンスの製品を統括するシニアディレクターのMark Crichton(マーク・クライトン)氏は、金融機関やネットビジネス事業者が直面しているオンライン脅威の現状とその対策について言及した。

 日本ではフィッシングサイトの件数は減少しているものの、被害総額は増加傾向にある。その理由は、攻撃者側の手口が巧妙になっているからほかならない。

 RSAの調査によると、2015年に発見されたフィッシング詐欺件数は約5億件で、主に金融系企業がターゲットになっているという。Crichton氏は、「オンラインで消費者とやり取りする企業は、フィッシングに対する情報を消費者に提供し、注意喚起を促すことが重要だ」と指摘する。

RSA シニアディレクター Mark Crichton氏
RSA シニアディレクター Mark Crichton氏

 サイバー犯罪者がやり取りをする“アンダーグラウンド”の世界では、フィッシングサイトを簡単に構築できるツールが売買されている。Crichton氏は「ダイアログボックスに必要情報を入力して盗取したい情報のチェックリストをオンにしておけば、(正規のオンラインバンキングサイトを)完全にコピーし、好きな場所にホスティングできる」と、攻撃参入の敷居が下がっていると説明する。実際、サービス妨害(DoS)攻撃の代行サービスには、「1時間10ドル/1日50ドル(5分間の無料トライアル込み)」といったメニューもあるという。

「アクセス許可」項目の確認は必須

 近年顕著なのは、モバイルデバイス(スマートフォン)を狙った情報盗取攻撃だ。2015年の攻撃件数は、2012年と比較し50%増となった。Crichton氏によると、その大半は金品を奪うまでには至っていないものの、2014年における被害金額は、2012年と比較し142%増になったという。

 以前はAndroidの脆弱性が狙われることが多かったが、現在はiOSもAndroidと同様に危機に晒されている。ただし、セキュリティレベルは同等であっても、Androidの方がオープンであり、ベンダーや通信事業者のコントロールが利かない状態は変わっていないとのことだ。

 フィッシング対策同様、モバイルデバイスのセキュリティ対策も、ユーザーへの情報提供と注意喚起が必要であるとCrichton氏は説く。

 「モバイルアプリの場合、ダウンロードとインストール時に表示される『アクセス許可』の項目を確認することで、かなりのリスクを回避できる。例えば、バッテリの残量を管理するアプリが、ロケーション情報や電話番号、SNS、システムツールなど、あらゆるリソースへのアクセスを要求すれば、『これはおかしい』と判断できる。しかし、多くのユーザーは、アクセス許可の項目を十分に確認していない」(Crichton氏)

 一度マルウェアアプリをインストールしてしまえば、デバイスに格納されている情報は、すべて攻撃者に筒抜けとなる。例えば、「iBanking」というマルウェアアプリは、SMSメッセージやマイク機能を使った音声の盗取などを実行する。さらに、オンラインバンキングで利用されるワンタイムパスワードも盗取して金品を奪うものだ。

iBankingの管理画面。iBankingをインストールしたデバイスの情報を盗取するだけでなく、操作も乗っ取れる
iBankingの管理画面。iBankingをインストールしたデバイスの情報を盗取するだけでなく、操作も乗っ取れる

リスクベース認証+生体認証でセキュリティ向上

 では、こうした攻撃に対し、企業はどのような対策を講じるべきだろうか。

 Crichton氏は、「単一のセキュリティ対策ツールで段階的な攻撃を防御することは不可能であり、階層型の保護対策が重要だ。モバイルデバイスに関しては、生体認証が有用な手段となる」と語る。

 同氏によると、多くの金融機関は生体認証への関心が高いという。実際、マレーシアのHong Leong銀行ではRSAの「RSA Adaptive Authentication」を活用した指紋認証を採用している。

 同製品は、ログインやサービスの操作、利用状況といった利用者の行動に対してリスクを分析して、リスクが高いと判定した場合にはIDと固定パスワード以外の認証を追加して本人確認の精度を高める「リスクベース認証」を採用している。Adaptive Authenticationではソフトウェア開発キット(SDK)を利用して、指紋認証や目の静脈パターン認証も、認証要素として採用できる。

 一方で生体認証はその精度を疑問視する声もある。一番普及している指紋認証は、デバイスの性能に左右されることもある。

 「どの認証が一番有用だと考えるか」の問いに対しCrichton氏は、「私見だが」とした上で「音声認証や顔面認証などもあるが、ノイズも多く、誤認識もある。現時点では目の静脈パターン認証が有効だ」との考えを示した。

モバイルデバイスの「リスクベース認証」では、ロケーション情報などから本人かどうかを判断し、疑わしい場合には、認証のハードルを上げたり認証拒否をしたりする機能を提供する
モバイルデバイスの「リスクベース認証」では、ロケーション情報などから本人かどうかを判断し、疑わしい場合には、認証のハードルを上げたり認証拒否をしたりする機能を提供する

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