業界を問わず、生産的で役に立つ組織内ビジネスアプリケーションを開発して導入する能力は、大企業が競争を戦う上で力になる。大企業の従業員が、生成されたデータをすばやく効率的に収集、処理し、そのデータに基づいて行動できるようにすることは、製品を生み出したり、顧客にサービスを提供するのと同じくらい重要だ。それが、モバイル、ビッグデータ、そしてモノのインターネットから得られた教訓だと言える。
Microsoftのアプリケーションプラットフォーム担当コーポレートバイスプレジデントBill Staples氏は米国時間11月30日、「PowerApps」と呼ばれる新たな取り組みについて発表した。PowerAppsが目指すのは、大企業の中にいる開発者の力を増幅するツールを提供することだ。
開発者はこれらのツールを使うことで、必要な時にどこからでも、どんなデバイスでも使える、モバイルに最適化されたアプリを作り、それを他のサービスと簡単に統合することができるようになる。
発表によれば、PowerAppsはあらゆるレベルでビジネスアプリケーションの開発を加速するという。Microsoftは、PowerAppsが提供するツールは、これまで開発に数カ月から場合によっては数年かかっていたアプリケーションを、ほんの数日、または数分で作れるようになる水準まで、開発のスピードを上げることができると述べている。
当然期待されるように、PowerAppsは「Office 365」や「Azure」、あるいは「Dynamics CRM」、「SharePoint」、「OneDrive for Business」など、その他のクラウドサービスを利用することで多くの恩恵を得られるようになっている。PowerAppsはまた、SalesforceやSAPなどサードパーティのクラウドサービス上にあるデータも統合できる。
PowerAppsはかなり高い目標を掲げている。そして当然、発表に書かれていることをそのまま鵜呑みにすることはできない。それでも、そこで示されている概念が持つ潜在的な可能性はリアルであり、無視できないものだ。有益なビジネスアプリケーションを素早く生み出し、導入できる企業は、競争上の優位を得ることになる。
Microsoftは開発者向けのウェブページを用意しており、公式に提供が開始されれば、このページに登録することで、PowerAppsに直接触れてみることができるようになる。それまでの間は、MSDNのウェブサイト「Channel 9」で、PowerAppsの利点を説明するチュートリアルビデオをいくつか見ることができる。
必要なのは企業文化の変化
PowerAppsは、エンタープライズ顧客向けに生産性ソフトウェアを提供することを重視するMicrosoftの取り組みの1つだと言える。「Power BI」や「Windows 10」、Azure、Office 365などと同じく、PowerAppsもモバイルファースト、クラウドファーストの仕事環境を作るという同社のビジョンを構成するレイヤの1つだ。
Microsoftの製品ラインを構成する、PowerAppsやその他のクラウドベースのサービスは素晴らしいもののように見えるが、これらのサービスが成功するかどうかは、予想が極めて難しい「人間の性質」という要素に依存している。
大企業のモバイル労働者が、クラウドサービスを利用して協力してプロジェクトを進めたり、文書を共有したり、ビジネスアプリケーションを開発したりするビジョンを実現させるには、これらの新たな活動にはそれだけのメリットがあるということを、企業の従業員に納得させる必要がある。
そのビジョンを実現するには、企業のあらゆるレベルの従業員が、ダッシュボードを見たり、アプリケーションを作ったり、企業が生成したデータを処理したりする方法と理由を学ばなければならない。これは多くの労働者にとっては受け入れにくいことかもしれず、Microsoftにとっては非常に大きな課題になるだろう。
結論
Microsoftはほかの企業にとっては真似することさえ難しい、エンタープライズ向け生産性ソフトウェア統合スイートを持っている。PowerAppsの発表によって、このスイートにあらたな機能のレイヤが追加されたことになる。そして2016年以降に同社が取り組まなくてはならないのは、企業の労働力を構成する人たちに、実際にMicrosoftが作ったソフトウェアをもっと使ってもらえるように説得するという仕事だろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。