日本マイクロソフトがクラウド事業におけるパートナーエコシステムの拡充に一段と注力している。その理由はどこにあるのか。
マイクロソフトの会見に新パートナー6社が登壇
「クラウドファーストに向けた顧客ニーズにきめ細かく対応していくためには、多種多様なパートナー企業とのネットワークが不可欠だ」
日本マイクロソフトでクラウドパートナー戦略の推進役を担う高橋明宏 執行役常務は先頃、同社が開いたクラウド事業におけるパートナーエコシスステムの拡充に向けた取り組みを説明する記者会見でこう強調した。
高橋氏は会見で、同社のクラウドパートナーを「マネージドサービス」「IPサービス」「クラウドインテグレーション」「クラウドリセラー」といった4つのタイプに分類し、それぞれの特長を生かすとともに、パートナー間で連携も図ることができるように支援していく姿勢を示した。
さらに、「マイクロソフトはこれまで、パートナー企業に対して当社の商品をより多く売ってもらえるように支援してきたが、これからのクラウド時代にはそれもさることながら、顧客のビジネスにいかに貢献するかを第一義に協業していく必要がある。そうした顧客視点のパートナーエコシステムの拡充に注力していきたい」と、今後のパートナーエコシステムのあり方について基本姿勢を示した。
会見では、4つのタイプの分類それぞれにおいて、新たにパートナーシップを結んだ新興企業も登壇。マネージドサービスではクララオンライン、ブロードバンドタワー、IPサービスではテクノスデータサイエンスマーケティング、FPTジャパン、ネクストセット、クラウドインテグレーションではナレッジコミュニケーションといった6社のパートナー企業の代表者が、それぞれマイクロソフトのクラウドサービスを活用した得意領域の事業内容について説明した。
日本マイクロソフトの高橋明宏 執行役常務(左から4人目)と新クラウドパートナー6社の代表者
AWSのパートナーエコシステムを追撃できるか
クラウドパートナーのエコシステムの拡充という意味では、日本マイクロソフトは10月にも法人向けモバイルデバイス管理(MDM)分野で国内最大手のサービスプロバイダーであるアイキューブドシステムズとの提携を発表した。
これを機に自社のクラウド基盤をAmazon Web Services(AWS)からMicrosoft Azureへと全面移行したというアイキューブドシステムズも、MDM最大手とはいえ新興企業である。
マイクロソフトがこうした新興企業との提携発表を大々的に行うのはこれまでなかったことだが、同社にとっては新たな領域に向けたクラウドパートナーのエコシステムの拡充という姿勢を明確に示す意図があった。その意味では、新たにパートナーシップを結んだ6社の新興企業を紹介した今回の会見も、同様の意図による第2弾の発表と見て取れる。
マイクロソフトがこうした得意領域を持つ新興企業との提携を重視しながら、クラウドパートナーのエコシステムの拡充に注力しているのは、まさしく冒頭で紹介した高橋氏の発言が最大の理由だ。
さらに、クラウド市場での競争状況から、最大のライバルであるAWSのパートナーエコシステムを強く意識しているのは間違いない。クラウドサービスで先行したAWSのパートナーエコシステムは、日本でも今や大きなパワーとなっており、他の追随を許していないのが現状だ。
パートナー企業の社数だけを見ると、マイクロソフトのほうがオンプレミスで培った圧倒的な規模を持つが、クラウド市場での影響力はAWSのほうが大きくリードしている状況といえる。もともとパートナーエコシステムづくりにおいて長年の経験と実績を持つマイクロソフトにとっては、こうした状況は見過ごせないだろう。
今後は、クラウドサービスそのものの“商品力”とともに、パートナーエコシステムの拡充においても、AWSとマイクロソフトの間で激しいバトルが繰り広げられそうだ。