矢野経済研究所は3月10日、国内のFinTech(フィンテック)市場の調査結果を発表した。2015年度の国内FinTech市場規模は、33億9400万円の見込み、ブロックチェーンの拡大などにより、2020年度には567億8700万円に急拡大すると予測している。
調査では、「ソーシャルレンディング(融資)」「クラウドファンディング」「投資・運用サービス(投資・運用、情報提供)」「ペイメント・決済」「ブロックチェーン(プラットフォーム、クリプトカレンシー)」「企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)」「家計簿・経費精算アプリ(家計簿・資産管理、経費精算)」「金融機関向けセキュリティサービス」の8領域を対象とした。
国内FinTech市場規模は従来の金融機関が提供していない、革新的なサービスやその基礎技術を提供するベンチャー企業に焦点を当て、当該ベンチャー企業の売上高ベースで算出している。
(矢野経済研究所推計。2015年度は見込値、2016年度以降は予測値)
調査の結果、2015年度の国内FinTech市場規模は、33億9400万円の見込みとなった。3メガバンクグループや大手SIerによるベンチャー企業向けイベントが多く開催され活況を呈したほか、ベンチャー企業と大手企業との協業事例など、市場は盛り上がりを見せているという。また、ブロックチェーンの急速な拡大や、官民による支援体制の整備などを背景に、2020年度には567億8700万円に急拡大すると予測している。
域別にみると、2015年度は特に「クラウド型会計ソフト」と「ソーシャルレンディング(融資)」が市場をけん引した。クラウド型会計ソフトは、従来のインストール型の会計ソフト導入企業のうち、中小企業を中心にクラウド化が徐々に進むとみている。ソーシャルレンディングは、2020年の東京五輪に向けて不動産市場が盛り上がりをみせることを鑑み、銀行融資が難しい不動産開発段階から携わることができるため、伸びが期待できるとした。
今後については、2017年度以降に市場を強力にけん引する領域として「ブロックチェーン」の成長が期待できるとした。ブロックチェーンとは利用者同士をつなぐP2P(ピアツーピア)ネットワーク上のコンピュータを活用し、権利移転取引などを記録、認証するしくみで、日本でも多くの実証実験が実施されており、また販売代理店網も徐々に構築が始まっている。
まずは企業の情報系を中心にブロックチェーンを活用したシステムの導入が進むとみており、2017年度以降は、ブロックチェーンを活用したシステムの採用が中小企業を中心に始まる可能性がある。なお、金融機関への導入は、米国R3社が主導するブロックチェーンに関するコンソーシアムの動向などがあるため、普及までにはある程度の時間を要するものとした。
そのほか、管轄官庁側の支援体制も徐々に整いつつあることや、ふるさと投資や株主コミュニティ制度などといった地方銀行や地場証券の取り組みも始まっており、それらを背景に、2020年度の国内FinTech市場規模は567億8700万円に達すると予測している。
調査は2015年7月から2016年1月にかけて実施され、国内のFinTechベンチャー企業、金融機関、SIerに対し同社の専門研究員がヒアリングを行ったほか、文献調査も併用している。