Fintechの正体

実体化するFintech(前編)--幻滅と安定への2016年

瀧 俊雄

2016-02-02 07:30

 前回は2015年のFintechの動きを取りまとめて紹介した。今回は2016年のFintechや、2017年以降の動きを考えてみよう。

 2015年末、金融庁の金融審議会より2点の報告書が発表された。「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」、「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」の2つの報告書は、案が提出されてから1週間を待たずして報告された一方、その踏み込んだ内容は一読すべきものとなっている。


 2014年10月より決済高度化のスタディグループが発足して以来、従来からの金融インフラの性質向上の観点に加えて、ベンチャープレーヤーにおける試行錯誤を制度に生かす方策が検討されてきた。上記の報告書を受けた2016年以降の政策的なトピックとしては、下記が議論されていくものとみられている。

  1. 銀行によるFintech企業への出資
  2. 携帯電話番号を利用した送金サービス
  3. ブロックチェーン技術に関する検討
  4. 銀行システムのオープンAPIの検討作業部会
  5. 銀行と利用者の間の「中間的業者」への制度整備
  6. キャッシュアウトサービス
  7. ビットコインにおけるマネーロンダリング規制・利用者保護

 これらは個別に多くの論点や可能性を持つテーマであるが、スピード感ある制度整備が進む中で、2016年は実用に向けたあり方が模索されていく段階にあるといえる。

 とりわけ、(1)銀行業によるFintech企業への出資は大きなテーマであり、ECサイトにおける商流データやさまざまな融資に用いることができる新しいデータを取り込む、新しい選択肢を銀行業にもたらすものといえる。また、今後創業を目論む起業家にとっても、従来のIPOや事業会社への売却といったエグジット手段に加えて、銀行による買収が選択肢の1つとなることで、起業の裾野拡大をもたらすものでもある。

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