日本マイクロソフトは6月14日、「NPO法人と連携したコンピュータサイエンス教育施策」に関する記者会見を開催した。
Microsoft 最高経営責任者(CEO) Satya Nadella氏は、2015年9月に全世界のコンピュータサイエンス教育の普及を行う非営利の団体や活動を対象に、7500万ドルの投資を行うと発表している。それに習ってではないが、米国政府は2016年1月にコンピュータサイエンス教育を支援する政策「Computer Science For All」を発表。日本政府も24月開催の産業競争力会議で、プログラミング教育を2020年までに小中学校で必修科目にすると提言した。このようにワールドワイドでコンピュータサイエンス教育への注目が高まりつつあるなか、日本マイクロソフトは、プログラミング教育へのアクセスが困難な子どもや若者に向けてNPO法人と連携し、「Microsoft YouthSpark: Programming for all~全ての子ども・若者に~」を実施する。
左から、NPO法人 育て上げネット 理事長 工藤啓氏、日本マイクロソフト 代表執行役 会長 樋口泰行氏、NPO法人 Canvas 理事長 石戸奈々子氏
最初に登壇した日本マイクロソフト 代表執行役 会長 樋口泰行氏は、「コンピュータとソフトウェアの関係性が逆転し、ソフトウェアが持つ価値が高まり、付加価値を与える領域が広がっている」と説明する。「われわれはソフトウェアに注力してきた企業であるからこそ、プログラミングを行うエンジニアの価値を理解している。プログラミング技術を持つ人材が増えることで国力増加につながる」(樋口氏)。さらに、「日本マイクロソフトも(IT業界の大手企業として)社会に恩返しする考え方で、コンピュータサイエンス教育に取り組む」(樋口氏)と今回のプロジェクトの主旨を説明した。
今回のプロジェクトでは、IT環境の拡充に7000万円の投資を行い、学校の通常授業以外にプログラミング授業の機会を設ける。障がいや居住地域の問題で通常のプログラミング授業にアクセスできない児童生徒に向けて、コンピュータサイエンス教育を提供することが目的だ。理系エンジニア育成、若年無業者の就労支援も対象としている。
若者の就労支援については、1万人を対象に合計100回のセミナーを開催する。1万人のうち内の3000人は比較的高度なプログラミング教育を行うとした。樋口氏は、「日本マイクロソフトの各部署から100人を動員し、同プロジェクトでITスキル講習を行う講師250人に対して技術支援を行う」と述べた。「1人でも多くの若者の社会参画につなげたい」(樋口氏)
NPO法人 Canvas 理事長 石戸奈々子氏は、今回の取り組みについて「プログラマーを育成するのではなく、プログラミングを通じて論理的に考える力を身に付けさせたい」と説明。プロジェクトを通じて新たな文化や仕事を生み出せる子どもたちが現れることを期待したいと述べた。
同プロジェクトは、7月1日から1年間実施する。来年以降については、「続けたいとは考えているものの、まずは1年間実施した結果を踏まえて判断したい」(樋口氏)そうだ。樋口氏は、現状の国内エンジニアを取り巻く環境に対して、能力が正しく活かされていないと分析する。「例えばドイツのIndustrie 4.0のように、日本独自の技術展開が可能だと考えている。今回の取り組みがそのままつながる訳ではないが、明るい未来につながるはず」と取り組みの価値を強調した。