ニュージーランドのStretchSenseは、スポーツウェアに埋め込むことによって、身体をどのように曲げ伸ばししているのかを調べることができるセンサデバイスを開発しているベンダーだ。この“伸縮センサ”の見た目は、布製のゴムバンドそのもの。伸縮するセンサを伸縮する布で覆っており、どのくらい伸ばされているかが分かるようになっている。
想定している伸縮センサの利用用途は、スポーツ領域とVR(Virtual Reality、仮想現実)だ。いずれも、衣類にセンサを埋め込むことで動きを把握する。スポーツウェアに埋め込めば、選手のパフォーマンスを追跡したり、テクニックを計測できる。関節にかかる力を調べれば、怪我を予防できる。リモートでのコーチングも可能になる。また、観客から見れば純粋にエンターテインメントになる。
1~2年後にはセンサを搭載したスポーツウェアの市販もありえる
ニュージーランドStretchSenseでCEO(Chief Executive Officer)を務めるBenjamin O'Brien(ベンジャミン・オブライエン)氏
会社の創業は2012年11月で、現在は伸縮センサの開発キットを1セット1000ドルで販売している。既に28カ国で200以上のパートナーが研究開発用途で使っている。現時点では市販のスポーツ用品には使われていないが、これから1~2年後には市販も十分にありえると、最高経営責任者(CEO)のBenjamin O'Brien氏は言う。
コストも安いという。「大量生産すれば単価数ドルで伸縮センサを出荷できる」(O'Brien氏)。Androidスマートフォン向けに、センサデータをグラフで可視化するアプリケーションも提供済みだ。センサはBluetooth通信機能を備えており、スマートフォンでリアルタイムに伸縮状況が分かる。
伸縮センサを応用した衣類の例としてO'Brien氏は、伸縮センサ付き手袋のプロトタイプを制作した。5本指それぞれの背部分に1本づつ伸縮センサを埋め込んでいる。これを手にはめると、それぞれの指がどれだけ曲げられているかが分かる。手を握る仕草や手を広げる仕草を把握できる。
伸縮センサ付き手袋のプロトタイプと、ゴムバンド形状の伸縮センサなど
キャパシタを伸び縮みさせられれば蓄電容量を変化させられる
伸縮センサを引っ張って伸ばしてみせるBenjamin O'Brien氏
伸縮センサのメカニズムを一言で言えば、「伸び縮み可能なキャパシタ(蓄電デバイス)」(O'Brien氏)だ。引っ張って伸ばすと、電気を蓄えられる容量(キャパシタンス)が増える。「バンドの長さとキャパシタの容量には相関がある」(O'Brien氏)。何らかの方法でキャパシタの容量を調べることができれば、その時に伸縮センサがどれだけの長さに伸ばされているのかが分かる。
ゴムバンド形状のキャパシタ本体はパッシブ型のセンサであり、外部につないだセンサ基盤からキャパシタに電気を流すことによって、キャパシタの容量を計測できる。容量が小さければ短時間で蓄えることができるが、容量が大きければ蓄えるのに時間がかかる。1秒当たり100回とか1000回とか計測することによって、バンドの伸縮状態をリアルタイムに把握できる。