「従来、文書に電子署名を施すことは面倒だった。USBトークンを使うなど、デジタル証明書の扱いが大変で、一般ユーザーにはハードルが高かった。電子署名にまつわる作業をクラウド上で完結できることが重要だった」――。
アドビシステムズは5月18日、クラウド上でPDF文書に電子署名を施せるサービス「Adobe Sign」(Adobe Document Cloudの構成要素の1つ)について会見し、“クラウド署名”の意義を説明した。
「クラウド上での電子署名なら、導入も利用も簡単だ」と、米Adobe SystemsでDocument Cloudビジネス部門のSenior Product Managerを務めるAndrea Valle氏はアピールする。
電子署名をクラウド上で簡単に、標準化狙ってコンソーシアムを設立
「電子署名の需要そのものは、以前から大きい」とValle氏は指摘する。「医療や製薬分野では文書への電子署名が義務付けられている。公共分野でも一般的に電子署名が使われる」(Valle氏)。
これまでもアドビは電子署名の機能を提供してきた。具体的には、PDF作成ソフトのAcrobatを使って、PDF文書に電子署名を施せる。また、閲覧ソフトのReaderを使って、電子署名を検証できる。
米Adobe SystemsでDocument Cloudビジネス部門のSenior Product Managerを務めるAndrea Valle氏
スマートフォンなどのモバイル端末の時代になり、電子署名に必要なデジタル証明書の扱いが、さらに負担となってきた。簡単に使える電子署名の仕組みが求められていた。
2016年6月には、米Abobe Systemsが主体となって、電子署名をクラウドで実現するためのオープンな標準仕様を決める業界団体「クラウド署名コンソーシアム」を設立した。
コンソーシアムで策定した標準仕様を採用した最初の製品がAdobe Signだ。「Abobe Systemsはメンバーの1社に過ぎない。今後は他社からもクラウド署名に対応した製品サービスが提供されることを期待している」(Valle氏)
クラウド型の電子署名サービスを提供、国内DCも開設
Adobe Signは、PDF文書に電子署名を施す機能と、電子署名を利用した文書の承認ワークフロー機能を提供するクラウドサービスだ。
Adobe Signで文章に電子署名を施している画面
PDF文書への署名や、署名の検証ができるほか、紙文書にハンコを押してワークフローを回すという既存の業務プロセスをデジタル化できる。
電子署名時には、誰が署名したのかが視覚的に分かるように、文書に手書き文字のイメージを重ねて表示することも可能だ。
署名に必要なデジタル証明書は、クラウド上で保管する。電子署名時は、あらかじめ登録しておいたデジタル証明書の中から、署名に使うデジタル証明書を選んで使う。
署名済みのPDFを受け取ったユーザーは、署名欄をクリックするとAdobe Sign画面が表示され、署名を検証できる。
2016年10月には、国内企業のコンプライアンス需要を満たせるように、日本国内のデータセンターからサービスを提供できるようにした。