不確実性を生かす
Nathan氏は、データサイエンスの流行初期にも同様の状況を目撃したと述べている。また、現在はまだ距離があると認めつつも、企業の経営者はいずれそのことを理解するはずだと同氏は言う。
意思決定者は、判断を下すのに慣れている。企業の最高経営責任者(CEO)は統計を本能的に理解している。日常的に行っていることだからだ。統計の背後にある数学は理解していなくても、CEOにとって、根拠を集め、それをやりとりしながら作業を進め、根拠に基づいて判断を下すことは、経営者としての本能になっている。
Nathan氏がHITLの有効性を信じているのは、この仕組みが2つのことをベースにしているからだという。
第1に、この手法は機械と人間の力を組み合わせたものだ。今のところ、企業の人事部門ではこのことはほとんど考慮されていないが、Nathan氏は今後、オートメーションのための職務記述書といったものが必要になってくると考えている。
今後は、人間についてだけ当てはめていることの多くを、人間と機械の組み合わせについても当てはめる必要が出てくる。これらのことは、コンプライアンスや監査、継続性などのためだけであっても、極めて真剣に考える必要がある。
わたしの経験では、どんな組織にも、リソース不足で取り組めていないプロジェクトがある。業務プロセスが自動化されれば、人間がそれらのプロジェクトに取り組む時間を作ることができる。
このことは、HITLが重要である2つめの理由につながる。Nathan氏は、機械学習は大量のデータからパターンを特定し、一般化を行うためのものだと考えられているが、まもなくパラダイムシフトが起こる可能性があると述べている。
機械学習には、単にパターンを発見するためだけでなく、不確実性を発見し、チャンスに繋げるために使える可能性がある。これはリスクの話ではない。リスクには利点はなく、保険を買うしかない。しかし、リスクと不確実性を見分けることができれば、不確実性のあるところにはチャンスを見いだすことができる。
能動学習を使えば、データセットに存在する不確実性を発見できる。つまり、データの中からリスクを取り除き、人間の専門家を、チャンスを生かすことに集中させることができるわけだ。最近では、まさにこれを実行している企業が登場しつつある。Stitch Fix(編集部注:AIを活用したパーソナルスタイリストを提供する新興企業)などはその好例だと言えるだろう。
わたしは、専門家の能力を強化できる、この人間と機械を組み合わせたモデルの有効性を信じている。専門性のレベルの問題は、どの業界にも存在する。その分野に詳しい人間であれば、80%の専門性を発揮できるかもしれない。専門家であれば、95%の専門性を発揮できる可能性もある。
しかしそれ以上になると、得られるものは減っていく。これは混乱や変動、主観的な判断、専門家の間の意見の相違などがあるためだ。これらはまだ未知の分野であり、完全な答えは存在しないが、これを現実に活用していくことは可能だろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。