IDC Japan(IDC)は1月9日、国内における働き方改革ICT市場予測を発表した。2017年の市場規模は支出額ベースで2兆2769億円。2017~2022年の年平均成長率(CAGR)は7.6%で、2022年には3兆2804億円まで拡大するという。
IDCでは、ICT市場をハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービスの4つに分類。この4分野の中から労働時間の短縮、労働生産性の向上、時間と場所に柔軟性を持たせた働き方の促進、ルーティンワークの削減、ワークライフバランスの向上などを働き方改革の主目的と定義し、取り組みをサポートするテクノロジーとして市場規模を算出している。
成長率が最も高い分野は、ITサービス/ビジネスサービスで、CAGRが22.1%。続いてソフトウェアが12.2%、通信サービスが3.0%、ハードウェアが0.8%と続くと予測している。
ITサービス/ビジネスサービスは、2017年の市場規模は約2800億円と最も小さいという。エンタープライズモビリティ向けとコグニティブ/人工知能(AI)システム向けが急成長。2022年には約7500億円まで拡大するとしている。
ソフトウェア市場は2017年に5400億円となっているが、順調に拡大し、2022年は約9700億円に達するという。コラボレーション、プロダクティビティ(生産性)、セキュリティ、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)、アナリティクス/AIなど、どれひとつをとっても働き方改革にとって重要なテクノロジーで、働き方改革の原動力といえるとしている。
通信サービス市場は、企業向けのみデータ通信のみの集計になるという。一般的な通信サービス市場より小規模としている。
ハードウェア市場は、大部分が買い替え需要。2017~2022年のCAGRは最も低いとしている。
2022年の国内働き方改革ICT市場予測(出典:IDC)
3年目に入る安倍内閣の働き方改革は、2019年4月から関連法案を順次施行。時間外労働違反には罰則が課せられる。
過去2~3年の民間企業では残業時間削減の施策が目立っていたが、2018年に入るとICTを積極的に活用した生産性の向上、ルーティンワークの削減、柔軟な働き方の実現などの取り組みが増加したという。
RPAは膨大なルーティンワークを抱える企業を中心に試験導入から本格導入へと拡大。また、働き方改革関連法案の成立を機に、当月の残業時間を予測するツール、働き方を可視化するとともに分析するツールに注目が集まっているという。
アナリティクス/AIは、各ソフトウェアと組み合わせ、高度な自動化、個人の知識とノウハウの共有化、人の判断のサポートなどの分野で急速に進展。人とRPAなどのデジタルワーカーの協働、働き方の根本的な見直しへの機運が高まりつつあるとしている。
海外では、ワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの3領域で従業員、パートナー、顧客とのエンゲージメント方法を再創造し、持続可能な競争優位性の獲得を最終目的とする「働き方の未来(Future of Work)」の取り組みが活発化しているという。国内の働き方改革は、残業時間の短縮や生産性の向上、柔軟な働き方の実現など内向きな取り組みが大半で、社外のステークホルダーであるパートナーや顧客との関係性までを対象とする海外の取り組みと比べると見劣りするとしている。
IDC Japanで携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーを務める市川和子氏は「海外の働き方変革は、価値の創造、そこからもたらされる競争優位性の獲得を見据えて進んでいる。目先の残業時間短縮や労働生産性の向上で足踏みする国内企業は、10年後、20年後の存続が危ない」とコメントしている。