オバマ前政権時代のネット中立性規則を最終的に復活させることを目指して、Mozilla、Etsy、22の州政府などが、米連邦通信委員会(FCC)による同規則の撤廃を事実上認めた10月の裁判所の裁定に対して再審理を請求した。
ワシントンDCの連邦巡回区控訴裁判所による10月の判断は、ネット中立性の支持者に大きな打撃を与えた。ネット中立性とは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)が合法のオンラインコンテンツやアプリケーションをブロックまたは減速したり、有料優先伝送(ペイドプライオリティ)したりできないよう規制するべきという考え方だ。
それでも、Mozillaの最高法務責任者(CLO)を務めるAmy Keating氏は、米国時間12月13日に出したコメントの中で、「戦いの決着にはほど遠い」と述べた。
具体的な内容としてMozillaらは、10月の裁定を言い渡した3人の判事からなる審査員団、またはワシントンDC巡回区の控訴裁判事全員が参加する「大法廷」による再審理を求めている。原告団はこの訴訟について、「全米の消費者やインターネット企業に影響を及ぼす(中略)非常に重要」な問題に関わるものであるため、もう1度審議すべきだと主張している。
原告団には、Vimeo、非営利団体のINCOMPASのほか、Public Knowledge、民主主義と技術のためのセンター(Center for Democracy and Technology:CDT)、カリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utility Commission:CPUC)など、さまざまな非営利団体や権利擁護団体が加わっている。
この訴訟は2017年12月にさかのぼる。Donald Trump大統領が任命したFCCのAjit Pai委員長は同月、ISPがさまざまなサイトへのインターネットトラフィックを選択的に減速することをFCCが禁じた2015年の規則を、委員の投票によって廃止することに成功した。新たな規則は2018年に発効した。Mozillaをはじめとする原告団は、全米規模でネット中立性規則を復活させるため、FCCを提訴した。
一方で、米国の過半数の州は独自のネット中立性規則を法制化することを検討し、ワシントン州、カリフォルニア州、メイン州などはこの姿勢を貫いている。
2019年10月、控訴裁の3人の判事からなる審査員団は、FCCによる2018年の規則の大部分を全員一致で支持した。控訴裁はその根拠として最高裁判所による判決2件を挙げ、FCCの規則制定は合理的だと結論づけた。
2015年、FCCはISPを、1934年通信法に定められたTitle IIの電気通信事業に分類した。これによりFCCは、料金設定やプライバシーなどの問題に関連する慣行を規制する権限を得た。
2018年、FCCはISPをTitle Iの「情報サービス事業」に分類し直した。
「そうすることで、FCCはその歴史の中で初めて、ISPの行動を規制する権限を放棄した」とMozillaは申し立ての中で述べ、以下のように続けた。「その結果、ISPはインターネットアクセスをブロックまたは減速したり、インターネットエッジプロバイダー(オンラインでコンテンツやサービスを提供する事業者)に身代金のような形で利用料金を要求したり、あるいはエンドユーザーによるインターネットへのアクセスに干渉したりできるようになった。これらの行為はいずれも、控訴裁が支持した2015年のFCCによるネット中立性規則では禁止されていた」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。