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日本企業における文書管理システムの黒歴史--「検索性」の意味を勘違い

難波孝 (クニエ)

2020-06-01 07:00

 前回は、多くの日本企業での紙文書の扱い方、法律的な観点などからペーパレスを阻害する原因を紹介した。今回は、データを扱うシステムの歴史を紐解きながら対処法を考察する。

 デジタル化が進む中、企業や団体の文書管理に関して筆者が受ける相談として今も昔も変わらず多いのが「検索性の向上」だ。これだけさまざまな文書管理システムが世に出回り、さらにはそのほとんど全てのシステムが検索性の向上をアピールポイントの一つとしてうたっているのにもかかわらずである。

 データ量の爆発的増加や電子文書に属性が付与されていないなどが原因として良く挙げられるが、それは小さな素因のひとつに過ぎない。筆者の考える根本的原因は「企業が検索性の意味を勘違いしている」ということである。検索性の意味を実は誰も知らないのだ。

 近年、検索性のみならず、実は文書管理システムを利用する上で様々な問題が表面化している。そこで今回は文書管理の歴史を追いながら、問題点と解決策を解説する。

1.日本における文書管理の歴史

 日本企業の文書管理はコンテンツやITの進化により、概ね次の4段階の変化を遂げてきた。

(1)紙文書だけの時代

 かつて会社で使用する文書は全て紙で作成され、企業活動が行われていた。膨大な紙文書は、個人の引き出しやキャビネット、倉庫で管理され、伝達は郵送やファクスが主流であった。そのため一度に大量の情報交換は困難であり、企業間のコミュニケーションは現在と比較して限定的であった。

(2)ファイルサーバーの普及

 その後、電子メールの登場がコミュニケーションを大きく変えることとなる。電子文書が一般にも普及し、文書の伝達量やスピードは飛躍的に向上した。その際電子文書の保管先として登場したのがファイルサーバーである。

 ファイルサーバーにより保管場所は確保されたが、電子文書に関するルールや手順の整備が追い付かず、結果としてユーザーが自由にファイルを作成しフォルダに格納していく、ファイルサーバーがいわば無法地帯化してしまう企業が多発した。

(3)文書管理システムの登場

 その解決を担ったのが文書管理システムである。ファイルサーバーとは別に、契約書、図面といった特に重要な文書の管理のため、必要な部門が別のシステムで管理するという形で普及していった。確かに文書や部門ごとでシステムを分ける仕組みは一見管理や検索に優れているように思える。

 だが、これが黒い歴史の始まりであった。ファイルサーバーだけの時代の管理は確かに煩雑だったが、少なくとも同じデータベース上に全ての文書が存在した。しかし文書管理システムの誕生で、欲しい文書を検索する際、初めにどのシステムに文書があるのかを特定しなければならなくなってしまったのだ。

 そこで、ユーザーはその手間を省くために複製を作成し、ファイルサーバーに再び格納したのである。

 これにより紙文書としての保管も含め、同一文書が管理システム、ファイルサーバー、紙と重複して存在することとなった。この考え方が冒頭申し上げた検索性の勘違いにつながっている。

 検索性とは本来、「必要とする人欲しい時欲しい文書の最新版(原本)がすぐ取り出せる」状態でなければならない。

 しかし、部門ごとに共通認識を持たないまま文書管理システムを乱立させては、検索が極めて困難なことは一目瞭然である。故に「必要とする人」を「自分」に都合よく解釈を変え、「自分が欲しい時に欲しい文書がすぐ取り出せること(言い換えれば、自分が探せる範囲に文書の複製を作ること)」を検索性だと勘違いして運用してしまった。

 さらに言うと、電子データは複製を取ることでどれが最新版(原本)であるかわからなくなってしまうため、それが最新版(原本)であるかどうかも、もはや気にしなくなってしまった。その結果、ファイルサーバーはもとより、文書管理システム自体も無法地帯(誰も企業内の全文書管理システムを把握していない状態)にしていったのだ。

(4)ECMの輸入

 現在、諸外国の文書管理の主流はエンタープライズコンテンツ管理(Enterprise Content Management:ECM)システムである。文書管理システムとは異なり、文書だけでなく全てのコンテンツを一括で管理する仕組みだ。前段の文書管理システムで失敗した企業には夢のような話であり、事実多くの企業が導入を進めている。

 しかし、残念ながら個別の文書管理システムが乱立する企業では今さら要件や運用を統一することが難しく、また専門知識を要し工数も相当数発生するECM自体の実装も追い付かず、結果としてファイルサーバーと同等の機能しか活用できていないのが現状である。

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