海外コメンタリー

チューリングの遺産--今も第二次大戦時の暗号解読技術に学ぶFacebook

Daphne Leprince-Ringuet (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-11-02 06:30

 ブレッチリーパークは、第二次大戦中に英国の暗号解読の拠点だった場所だ。ここで行われた仕事は、単なる歴史上の出来事ではなく、現代のコンピューティング業界にも影響を与えて続けている。Facebookの技術的なブレークスルーの幾つかは、当時極秘とされていた暗号解読機「ボンベ(Bombe)」が生まれたこの場所にまで、そのルーツをさかのぼることができる。

 ロンドンの北約50マイル(約80km)のミルトンケインズにあるブレッチリーパークでは、当時、英国の政府暗号学校に所属する数千人の男女が働いていた(その多くは女性だった。現在のブレッチリーパークは博物館になっている)。

 英国の数学者Alan Turing氏と同氏が率いるチームは、この場所で専用の目的で作られた世界初のコンピューターを使用して、ドイツの暗号機「エニグマ」の暗号を解読した。Turing氏の電気機械的マシンであるボンベは、エニグマの仕組みを模倣する能力を持っており、暗号の解読に使われた。それによって、後にドイツが交信に使用していた暗号化されたメッセージを読むことも可能になった。

 この技術によって、連合国は敵の秘密通信を傍受できるようになり、これが戦争の行く末を決める要因の1つになった。

 ボンベのすぐ後に、Turing氏の同僚だったTommy Flowers氏が開発したコンピューター「コロッサス(Colossus)」が登場した。コロッサスは、機密通信の暗号化に使用されていたより複雑な暗号であるローレンツ暗号機の暗号を破るのに使われ、連合国軍が欧州大陸に上陸したDデイでは、ノルマンディーの敵軍の配置に関する情報を得るために使用された。

 当時のブレッチリーパークで行われていた仕事は極めて重要だったが、Turing氏と同氏のチームが残した業績の現代社会における重要性も、決してそれに劣るものではない。実際、ボンベとコロッサスは、今日のインターネットセキュリティの基礎になっているプロトコルの基盤を作ったと言っていいだろう。

 その例の1つが、「Zoncolan」と呼ばれるFacebookのコード解析ツールだ。Zoncolanは、同社が日々実行している数億行のコードを調べて潜在的な脆弱性を発見し、コードを実際に実行することなく分析結果を得ることができる。

 FacebookのエンジニアリングディレクターGemma Silvers氏は、米ZDNetの取材に対して「Facebookで実行しているアプリケーションのセキュリティと安全を確保するために、コード解析をどう利用されているかを理解しようとして、私たちがこれまでに行った仕事を調べたとしたら、その仕事がAlan Turing氏の業績と直接的に結びついていることが分かるだろう」と述べている。

 「同氏のチームが行った改良は、Facebookが企業として、多くのバグや脆弱性を発見するのに役立っている。もし人間の手で分析していれば、はるかに長い時間がかかるだろう。これは、コード解析や脆弱性検出の技術がブレッチリーパークと強く結びついていることを示す例の1つだ」(Silvers氏)

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