パーソルキャリアは、自社で運営する転職サービス「doda(デューダ)」を利用して転職した約4万人のデータを分析し、「異業種転職」「異職種転職」の実態とその結果をまとめた。コロナ禍前で転職求人倍率の平均が最も高かった2016年度と、コロナ禍の2020年度を比べ、「IT/通信」は異業種転職の上昇率で1位、「技術系(IT/通信)」は異職種転職の上昇率で2位だった。
「IT/通信」 に転職した人のうち、2020年度の異業種からの転職は57.5%となり、2016年度比較して9.9ポイント増加した。これについて、パーソルキャリアでは、全産業でIT人材の需要が高まる中、「IT/通信」は他業界と比較して「企業側の採用意向が旺盛であること」「未経験採用枠を増やしていること」などが、上昇率アップの要因として考えられる、としている。
また、「成長性の高い「IT/通信」でスキルを形成したいというニーズが増えていること」が挙げられるという。プログラミングをはじめとしたスクールなどで、IT関連の基本スキルを体得後、未経験での転職を目指す個人も増加傾向にあるとする。
「IT業界全体の案件が増えたことによる人手不足感もあり、プログラミングなどのIT基本知識を持つ人は即戦力候補となり、2016年度と比較して『IT/通信』の異業種転職の難易度が下がった」と同社は分析する。
2020年度に「IT/通信」 が異業界から転職を受け入れた業種の内訳と割合(出典:パーソルキャリア)
2020年度に「IT/通信」が異業種から最も多く受け入れた業種は「サービス」で、特に「人材サービス・アウトソーシング・コールセンター」からの転職者が多かった。派遣系のサービス企業からシステムインテグレーター(SIer)にITエンジニアとして派遣されるケースも多く、実績を積んでからSIerに転職することもキャリアパスの定番という。
また、「旅行/宿泊/レジャー」からの転職も増加。これはコロナ禍による業界の先行き不安などから、安定と将来性を求めて「IT/通信」への転職者が増加したことが考えられる。2番目の「メーカー」は理系出身者が多く、「IT/通信」への抵抗感が少ないことも要因として考えられている。
なお、2016年度から2020年度にかけて異業種からの転職受け入れ率が上昇した業界は、1位の「IT/通信」に次いで、「金融」「メディカル」の順になっている。
異職種転職については、「技術系(IT/通信)」に転職した人のうち、2020年度の異職種からの転職は21.6%で、2016年度の14.9%と比較して6.7ポイントの増加だった。
全職種の中で同職種の転職が最も多いが、全業界でDX(デジタル変革)推進の加速によって案件が増加する中で深刻な労働力不足が続いていることもあり、企業側は「技術系(IT/通信)」として活躍できるポテンシャルを持つ、異職種からの未経験者にも門戸を開き始めているという。
「技術系(IT/通信)」の将来性やニーズの高さに安心や安定感を求め、今後の年収増が期待できそうな点に魅力を感じることや、スクールやオンライン学習など、専門的なITスキルを体系的に学べる環境が増えたことも、上昇率アップの要因として挙げられている。
2020年度に「技術系(IT/通信)」が異職種から転職を受け入れた職種の内訳と割合(出典:パーソルキャリア)
「技術系(IT/通信)」が異職種からの転職を受け入れた職種の1位は「営業系」、2位は「技術系(電気/電子/機械)」だった。
「営業系」は、「他職種と比較して、折衝経験や高いコミュニケーション能力を持つ人が多く、若手においては、技術力を新たに身につければ、優秀なシステムエンジニア(SE)に育つ素養や可能性がある点が、異職種からの未経験でも採用されている要因」という。また、これまでの営業経験で培かった対人スキルを生かし、製品の導入エンジニアやプリセールスなど、開発経験を必要としないポジションでプロジェクトマネジメント(PM)としての活躍が期待されている。
「技術系(電気/電子/機械)」は、「知識の習得欲求が高い」「積み上げ思考」である点など「技術系(IT/通信)」との親和性が高い傾向にあるという。また、プログラミングなどへの抵抗感も少ない理系出身者が多い点なども挙げられるとする。
なお、2016年度から2020年度にかけて、異職種からの転職受け入れ率が上昇した職種の1位は「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」で、同職種での転職が少なく、事業会社経験者など未経験でも即戦力となる人材を積極採用しているためであるという。