本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナージャパンのエグゼクティブ プログラム シニアアドバイザー エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。
現在、大きな変化の時を迎えているテクノロジー。社会や生活者・消費者のライフスタイル、企業のビジネスを含む全てのものを大きく変えようとしている。これから2030年に向け、テクノロジーの進化とともに世の中はどのように変容するのだろうか。今後、CIO(最高情報責任者)やITリーダーに求められるテクノロジーとの正しい付き合い方、新たな時代に獲得すべきマインドセットなどについて、亦賀忠明氏に尋ねた。
先進テクノロジー、それを活用するデジタル人材に注目
長谷島:アナリスト/リサーチの仕事を始めたきっかけを教えてください。
亦賀:ガートナーに入社したのは1997年ですが、それから25年間、アナリストを続けています。以前は、ベンダーでシステムエンジニア(SE)を十数年経験しました。メインフレームからオープン、インターネットへとコンピューティングの歴史が大きく変わる中で製品系から業務系まで幅広く経験させていただきました。米国で約1年間ソフトウェア開発も行い、日本と米国の違いを目の当たりにしました。そこでは、やりがいを感じていましたが、ある時「もう少し世の中を広く見てみたい」と考え、ちょうどタイミングよく声をかけてもらいました。エンジニアとは、また別の角度で世の中のお役に立てることがあると思い、ガートナーで働いてきました。実際、当初の期待を超えてたくさんの素晴らしい経験をさせていただいています。
長谷島:これまでにどのような領域を担当されてきましたか。
亦賀:サーバーからスタートしました。Windowsに加え、UNIXサーバーやLinuxがブームになりました。特に、ベンダーの皆さまと日々テクノロジーや将来の市場、戦略などに関する熱い議論をしていましたね。それから市場の変化に合わせ、ユーザー企業の皆さまへのご支援と拡大していきました。領域もインフラ、クラウド、AI(人工知能)へと拡大し、ここ10年以上は、先進テクノロジーもカバーしています。今であれば量子コンピューターやメタバースなども担当領域です。さらに、ここ数年はテクノロジートレンドに加えて、それらを駆使するためのテクノロジー人材の在り方についても注力しています。 この「テクノロジー人材」と言うのは、IT部門でベンダーマネージメントをするだけでなく、実際にテクノロジーを使える人、駆使する人を意味しています。
長谷島:それらの領域は、今まさにどうすべきか非常に重い現実問題を抱えていますね。その方向性で議論もできますが、今回はより将来を見据え、どう人材を育てていくのか、さらに人材を支えるテクノロジーがどう進化していくのか、IT部門のリーダーはどう変わっていくべきかを議論したいと思います。
- 亦賀忠明氏
- ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト
- ITインフラストラクチャーに加え、「未来志向」をテーマに、先進テクノロジーに関する調査分析を担当。国内外のユーザー企業、主要なベンダー、インテグレーターに対して、さまざまな戦略的アドバイスを行っている。