AIで対応時間を90%削減--ソフトバンクが語った通信事業への導入効果

國谷武史 (編集部)

2017-05-01 07:00


ソフトバンク 代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏

 「人工知能(AI)は早いところが勝つ。実績を蓄積することが成功のキモなので、早く使った方がいい」――日本IBMが4月27~28日に開催した「IBM Watson Summit」では、基調講演に登壇したソフトバンク 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の宮内謙氏が、コグニティブ技術「Watson」を社内導入した効果について紹介した。

 ソフトバンクは、2015年からIBMとWatsonのビジネスを展開している。宮内氏の同イベントへの登壇は、2016年の前回に続いて2回目で、今回は通信事業における顧客サポートや通信設備の保守での具体的なWatsonの導入効果に触れた。

 同社は、接客に関する知識を蓄積したデータベース「SoftBank Brain」を構築し、これをコールセンターや法人営業、ショップ、保守、社員サポートなどに活用する。Watson導入以前のコールセンターでは、年間8000件の問い合わせを受け付け、1回の対応に平均10分を費やしていた。  「4000万のモバイルユーザーと1万の法人顧客に対応している。約9カ月でSoftBank Brainに4万5500件のデータを蓄積し、さらに毎月4500件の情報を追加している」(宮内氏)


コールセンターにおける対応1件あたりの時間短縮効果

 顧客の問い合わせ内容は、WatsonがSoftBank Brainに蓄積されている学習データをもとに分析し、オペレーターに回答する内容の候補を提示する。これによってオペレーターが自身で候補を探す負担が軽減され、平均対応時間が15%短縮された。今後の機能追加によって半減を見込む。「現在のコールセンター規模は6000席だが、数年後には2000~3000席程度にできるめどがついた」(宮内氏)

 毎月追加する情報は、専任チームがベテランのオペレーターが対応した内容を入力しているという。ベテランの知見を新人の対応力向上に生かす狙いもある。Watsonが提示する回答候補の精度も2016年6月時点では78.3%ほどだったが、2017年3月には94.3%にまで向上した。


Watsonが提示する回答候補の精度の変化

 「ここからの精度向上にはしばらく時間を要するが、確実に高めていける」と宮内氏。コールセンターでの明確な導入効果が認められたことで、6月から全国のソフトバンクショップや家電量販店などの店頭業務にもこの仕組みを展開。将来的には、ウェブサイトの顧客サポートに適用し、チャットボットやLINEなどによる問い合わせ対応にWatsonを利用する計画だという。

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