「働き方改革」の効果をAIで可視化--ISIDなど3社が実証実験

ZDNET Japan Staff

2018-10-15 11:48

 電通国際情報サービス(ISID)、オカムラ、明治安田厚生事業団の3社は10月11日、オフィスリノベーションによる働き方改革が、社員の健康や行動に与える影響を明らかにする共同実証実験を開始したと発表した。人工知能(AI)を用いて社員の行動を可視化するシステムを構築し、生産性と健康を向上させるオフィスの実現を目指す。

 近年、「働き方改革」や「健康経営」は喫緊の経営課題となっており、その一環としてさまざまな施策をオフィスに導入する企業が増加している。効果としては、生産性向上やコミュニケーション活性化に加え、「座り過ぎ」解消をはじめとするワーカーの健康改善効果が期待されている。しかし、オフィス環境と従業員の行動の相関を定量的に計測する手法は確立されておらず、オフィス施策の効果が見えにくいことが課題となっている。

 今回の実証実験では、オフィスリノベーション前後の定点カメラの映像を、最新のディープラーニング(深層学習)を活用した画像解析技術で分析・可視化する。これを活動量計や質問紙調査などの個人データと組み合わせて検討することで、リノベーション前後での行動変化が心身の健康度や労働関連指標の改善につながるかを検証する。

 具体的には、以下の3つのステップで実施していく。

(1)リノベーション実施および計測・記録(期間:2017年11月~2018年8月)

  • リノベーションは、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、「心と体の健康」「社員ひとりひとりが生き生きと働く」を試行錯誤できる「ラボ(実験場)」での実証実験として実施。リノベーション後は、従業員がその時の仕事内容に適した場所を選択して働く「Activity Based Working(ABW)」の考え方を取り入れた、さまざまな広さのオープンスペース設置やグループ単位で使える執務机配置などが特徴。
  • 対象執務エリアの複数箇所に定点カメラを設置し撮影。撮影期間はリノベーション前後の各3日間、各日とも9時から17時まで。
  • 同エリアで勤務する従業員に活動量計を装着してもらい、座り過ぎを中心とした身体活動の記録データを取得。計測期間はリノベーション前後の各2週間、各日とも睡眠・入浴時などを除き終日。
  • 対象者の基本属性や心身の健康度、仕事への姿勢などを評価するために自記式の質問紙調査をリノベーション前後に実施。

(2)分析・プロトタイピング(期間:2018年1~11月)

  • 定点カメラで撮影した映像データに、ディープラーニング・アルゴリズムを活用した画像解析技術を適用し、オフィスのいつ、どこに、何人の従業員がいたかを認識・検出。
  • 検出したデータをもとに、経過時間ごとの従業員の位置を、オフィスの見取り図に重ね合わせて表示するシステムのプロトタイプを開発。リノベーション前後のオフィス内の人の流れが一目で分かる仕組みを実現する。

(3)効果検証(期間:2018年11~12月)

  • 従業員の身体活動の記録データと、(2)で得られたオフィス内の人の流れのデータを組み合わせて評価。ワーカーのアクティビティが高いエリアと低いエリアが、リノベーション前と比較してどのように変化したか、職種や業務内容ごとに特徴や違いがあるか、社員交流を目的としたオープンスペースが狙い通り活用されたかなどを検証。さらに、それらの行動の変化が心身の健康度や労働関連指標の改善につながるかを検証する。
(出典:オカムラ)
(出典:オカムラ)

 なお、実証実験における各社の役割と展望は次の通り。

  • ISID:同実証実験では、室内空間の画像解析に適したディープラーニング・アルゴリズムの適用と、解析結果を可視化するプロトタイプシステムの開発を担当。実証実験で得られるデータを起点に、画像解析精度の向上と様々な産業領域への社会実装を目指す。
  • オカムラ:同実証実験では、都内4拠点に設けた「ラボオフィス」の一つを実験場とし、効果検証の分析視点を提供。成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元する。
  • 明治安田厚生事業団 体力医学研究所:同実証実験では、活動量計、画像解析、質問紙調査のデータを組み合わせた分析と効果検証を担当。結果をもとに、勤労者の身体活発度やコミュニケーションを高めるオフィス環境のあり方を学術成果としてまとめ、公表していく予定。

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