日立製作所の横浜事業所は、ソフトウェア開発の拠点として同社のITプラットフォームを支えてきた。およそ3500人の技術者が集まり、製品やサービスを生み出している。近年は、デジタルソリューション事業の中核を担う「コトづくり」の拠点として、社会とビジネスの成長を支えている。
日立製作所 横浜事業所の社屋
横浜事業所では、業務の効率化や最適化を実現する「Optimized Office」の取り組みを推進する。室内の温度や二酸化酸素(CO2)濃度、太陽光発電量といった環境データをはじめ、空調・照明・水道などのビル設備データ、従業員の入退出記録、プリンタの使用状況、社員食堂の食事履歴、トイレの空き状況、従業員の行動データ、事業所内の人流情報を収集し、データ分析や活用プロセスを実験する場となっている。
例えば、電気・空調・エアコンなどビル設備の管理システムや、室温・外気温・湿度といった環境センサの情報を一元管理し、オフィスの空調機をコントロールすることで「我慢しない省エネ」を追求。「エコと快適さのちょうどいいバランスを目指している」(日立製作所 ITプロダクツ統括本部 イノベーションコンピテンスセンタ センタ長 鬼頭昭氏)
また、社員食堂のレジで決済すると社員証に喫食情報が記録され、そのデータをもとに管理栄養士からアドバイスを受けられる。食堂が混雑する時間帯や残食率が高くなる傾向などを決済データから導き出すことで、食堂運営の改善にもつなげる。
トイレの入口に設置されたデジタルサイネージ
日立製作所が開発した名札型ウェアラブルセンサ
数年前からトイレの空き状況の可視化に取り組んでいる。「トイレに行くと、いつも空いていない」という従業員の声を受け、一部のトイレにセンサを設置し、空き状況を自席で確認できるようにした。「携帯電話やウェブページで見られるようにしておいても、いざというときには使ってもらえない」(鬼頭氏)ということが明らかになり、現在はトイレの入口にサイネージを取り付け、違う階の利用状況をその場で分かるようにしている。
ワークスタイル変革の仕組みとして、「ヒューマンビッグデータ」を活用した組織の活性化を狙っている。従業員に名札型のウェアラブルセンサを装着し、加速度センサや赤外線センサを組み合わせて、従業員同士の対面情報や身体の動き、位置情報を計測・可視化する。こうして収集した行動データを人工知能(AI)で分析することで、組織の活性度を算出する。「組織の活性度が高いと業務の生産性も高い」(鬼頭氏)という。
社屋の屋上全体には、太陽光パネルを設置して発電している。フロア内に設置してあるデジタルサイネージでは、太陽光発電量や電力消費量、エコプロジェクトの達成率などをリアルタイム表示し、従業員の省エネ意識を高めている。
日立製作所の横浜事業所は“働き方改革の実験場”として、デジタルテクノロジやモノのインターネット(IoT)を活用したワークスタイル変革のアイデアを具体化すべく、実証実験を次々と進めている。
ITプロダクツ統括本部 プロダクツサービスソリューション本部 イノベーションコンピテンスセンタ センタ長の鬼頭昭氏と、同主任技師の鈴木直志氏(左から)