最近では、社内や社外の顧客が直接システムや情報にアクセスするためだけのソリューションを設計したり、運用したりすることはなくなっている。このことは、社外の顧客の顧客に対しても適用されるべきだ。産業用のモノのインターネット(IIoT)は、商品やサービスの提供方法を再定義しつつあり、企業と顧客の関係性を劇的に変えている。そして、ITリーダーが担うべき役割も変化している。
これが、長く製造業の分野に携わってきた、OpenTextの製造業担当産業マーケティングバリューストラテジストTom Leeson氏の意見だ。筆者は、OpenText主催のカンファレンス「Enterprise World」でLeeson氏に話を聞く機会があった。同氏は、IoTとオートメーションの普及によって、製造業者はデジタル化する以外に選択肢がなくなったと述べている。同氏によれば、製造業は、数ある産業の中でも日常的にもっとも大量のデータを収集している産業だ。
Leeson氏によれば、自動車産業は今後数年で、IoTのネットワーク、ソフトウェア、データ、受託製造を基盤とした、今とはまったく異なる産業に生まれ変わるという。「電気自動車が普及すれば、コネクテッドカーがネットワーク化された世界の一部になり、データに関する新たな課題を生むことになる。これは、巨大な変化が起きることを意味する。実際、今この産業に身を置くのは、刺激的な経験になるだろう」と同氏は言う。
あらゆる製造業者にとって、産業用IoTの実用化は、人工知能(AI)を利用した予測的メンテナンスの普及を意味する。製品のメーカーは、現場で使用されている製品にいつ問題が起こる可能性があるかを検知し、事前にソフトウェアアップデートを提供したり、メンテナンスチームを送るようになる。Leeson氏は「アナリティクスの次の進化は、予測的アナリティクスではなく処方的なものになる」と指摘する。「単にメンテナンスを予測するだけでなく、メンテナンスを回避する方向に向かう」と同氏は言う。その結果、ITシステムは「顧客の需要に対応し、顧客を満足させるため、稼働率を100%にする必要がある」という。
Leeson氏は、「顧客の顧客を満足させることができれば、顧客はずっとわれわれを信頼してくれるだろう。これを実現するには、(例えばエレベーターシステムなどの)エンドユーザーが所有する製品からのデータストリームを自動的に分析して、異常がないかを調べる必要がある。われわれは他の99%よりも、その1%に関心がある」と説明する。「データによってヒューリスティックに故障が発見できれば、適切な部品を持たせて修理担当者を送ることができる。現場に着いた修理担当者は、ボディカメラを着用し、バックオフィスのデータベースや資料、マニュアル、過去のトレーニング用動画などを利用しながら修理を行う」。こういった高度な能力を持つ企業は競争上有利だと同氏は言う。
Leeson氏は、今後の製造業者にとって「製品は契約の50%にすぎなくなる」と話す。今後は、製品や現場に組み込まれたセンサから得られるデータによって、顧客に付加価値サービスを提供するチャンスが生まれる。