Mist Systemsの共同設立者で社長兼CEOのSujai Hajela氏
Mist Systemsは11月6日、日本法人「ミストシステムズ」を設立するとともに、パートナープログラム「AI for ITパートナーシップ」を国内で展開することを発表した。ミストシステムズの社長には中原浩輝氏が就任し、AI for ITパートナーシップにはネットワンパートナーズなど8社が参加する。今後、さまざまなパートナーとのエコシステムを強化し、国内における位置情報と人工知能(AI)を活用した無線LAN環境構築を支援していく。
Mist Systemsは、BLE(Bluetooth Low Energy)による位置情報とAIを活用した無線LANネットワーク製品を提供するベンチャー企業。vBLE(仮想BLE)と呼ばれるアンテナとバーチャルビーコンを組み合わせた特許技術を用いて、無線LANエリア内の人やモノなどの位置情報などを把握し、それらのデータを深層学習などのAI技術を用いて分析して、異常検知やサービスレベル確保を行う。
AIエンジンである「Marvis」は自然言語処理が可能なバーチャルアシスタント機能を備え、機器のトラブルシューティングなどで適切な回答を返すほか、無線エリアで展開されるさまざまなアプリケーションを適切に稼働させ、顧客のユーザーエクスペリエンスを大きく高めることができるという。
Mist Systemsの共同設立者で社長兼CEOのSujai Hajela(スジャイ・ハジェラ)氏は、活用事例として2つのユースケースを紹介した。1つは、ある流通小売業で、巨大な倉庫内でパレットなどを搬送する自走ロボットの位置情報を同社ソリューションを使って管理しているという。ロボットは故障しても自らトラブルチケットを発行することはできない。AIによってロボットの異常検知を行いスムーズにトラブル対応に当たることで、倉庫の収益性を向上させている。
もう1つは、Walt Disney World Resort内にあるSwan Hotelだ。広い館内は通路案内が必要だが、バッテリ駆動のビーコンでは拡張性に乏しく、Wi-FiとBLEをそれぞれ別に構築するとコストがかかる。イベント担当者は、分析とゲストとのエンゲージメントのためにすぐに利用できるソリューションとしてMist Systemsを選択したという。
Hajela氏は「設立からわずか2年だが、小売業やエアライン、ソーシャルメディアコラボレーションのトップ企業など、Fotune 100の20%が導入を決めている。歴史の浅い企業がなぜ信頼を獲得できたのか。理由は大きく2つある。1つは、スマートデバイスの時代に相応しい新しいWi-Fiアーキテクチャを提唱したこと。もう1つは、経営陣が無線LANの経験豊富な専門家で構成されていることだ」と同社の特徴を紹介した。
Hajela氏によると、Mist Systemsが提唱するアーキテクチャは2007年に登場したクラウド型無線LAN製品「Cisco Meraki」以降、11年ぶりに登場した新しいアーキテクチャとなる。また、開発陣にはCisco Systemsなどで無線ネットワークの標準技術を開発してきたメンバーがおり、現在の無線技術(802.11e~ac)のコードの70%以上に関わってきたという。
「Mistだけが、業界初で唯一のAI指向の無線LANシステムを提供できる。また、Mistは企業のデジタルトランスフォーメーションを助ける。デジタルトランスフォーメーションには、AI、モバイルエクスペリエンス、クラウド、DevOpsによるアジリティが必要だ。Mistだけではできないこうした取り組みをパートナーとのエコシステムで実現する」(Hajela氏)
そこで展開するのが、AI for ITパートナーシップだ。中原社長は「顧客が最初に接するのは無線LANだが、そこから先の有線LAN、セキュリティ、WANというネットワークを経由してアプリケーションを利用できるようになる。無線LANにとどまるのではなく、有線LANからWANまでのフルスタックで可視化とポリシー制御を目指すことがAI for ITだ」と狙いを説明した。
ミストシステムズの社長に就任する中原浩輝氏
続いて、Mist Systemsが国内でソリューションの提供に当たり技術連携を行うバートナーとして、ジュニパーネットワークス、ヴイエムウェア、パロアルトネットワークスの事業責任者が登壇した。3社はそれぞれ、有線LAN、WAN、セキュリティの分野で、APIを使った連携を行う。
ジュニパーネットワークス 技術統括本部 テクニカルビジネス推進本部 本部長 上田昌広氏は「自動化とセキュリティに力を入れているが、自動化で必要なのは可視化である。Mistは、弊社に不足しているWi-Fiソリューションを補完する。連携することでワイヤレス領域についても悪意のある通信を止めることやスロットリング、QoSを実現する」と説明。
ヴイエムウェアのソリューションビジネス本部 本部長の小林泰子氏は「2017年末にSD-WANソリューションのVelo Cloudを買収し、NSXファミリとして展開。また、WANをアプリに応じて最適なアクセスを提供することで、データセンター、拠点、クラウドをオーバーレイで作っていくネットワークビジョンとしてVirtual Cloud Networkを立ち上げている。このビジョンを実現する上でキーになるのがMistだ。SD-WANからその先のクラウドまでを可視化して最適化している」とした。
また、パロアルトネットワークス チャネル営業本部本部長の鈴木康二氏は「当社はApplication Frameworkを軸に、世界最大規模の脅威情報を持つことが特徴。そのデータをAPIを通して協賛ベンダーに開放しており、Mistでもそのまま使える。他社とのコラボレーションが広がることは大きなメリットを生む。スピードが求められる中でのセキュリティ対策として有効に使ってもらえる。位置情報をマッピングして、すぐ分かることは、これまでにない革新的なソリューションだ」と期待を述べた。
このほか、ディストリビューターであるネットワンパートナーズ 代表取締役社長 執行役員の田中拓也氏と、マネードサービスパートナーであるNTTコミュニケーションズ 取締役の佐々倉秀一氏が登壇。田中氏はネットワンパートナーズが提供することによる付加価値として、先行して国内展開を手がけるなどMistに関して豊富なパイプラインがあること、複数ベンダー製品を経験するエンジニアによるテクニカルサポートがあること、品質管理センターによる輸入検査があること、国内在庫による保守サービスを提供すること、リセラーへの充実したトレーニングを提供することなどを挙げた。
その上で「パートナー企業、お客さまと理想的なビジネスリレーションシップの構築を目指す」とアピール。リセラーは当初、NTTデータジェトロニクス、ネットワンシステムズ、住友電設、NECネッツエスアイ、サイコンプ、パナソニックESネットワークの6社でスタートする。
また、NTTコミュニケーションズの佐々倉氏は「データやアプリのクラウドへのシフトや、デジタルトランスフォーメーションの進展によって、さまざまな企業との間でのデータのやり取りが加速している。当社では「DX Enabler」を掲げ、デジタルトランスフォーメーションをお客さまとともに実現する信頼されるパートナーになることを目指している。Mistと連携し、複雑化するトラフィックを可視化し、エンドツーエンドのデータマネジメントを実現していく」と述べた。
(左から)ネットワンパートナーズの田中拓也氏、NTTコミュニケーションズの佐々倉秀一氏、Mist SystemsのSujai Hajela氏、ミストシステムズ日本法人の中原浩輝氏、ジュニパーネットワークスの上田昌広氏、ヴイエムウェアの小林泰子氏、パロアルトネットワークスの鈴木康二氏