大日本印刷(北島義俊社長)は、ネットワーク上での暗号化、電子署名、電子認証などのセキュリティシステムとして広く利用されているRSA公開鍵暗号システムにおいて、ごく稀に公開鍵から秘密鍵を容易に解読できてしまう鍵のペアが生成されてしまうことから、この脆弱性の有無を診断するシステムを業界にさきがけて開発した。公開鍵の脆弱性を事前に診断するサービスを6月1日から運用開始する。
ネットワーク上での安全なデータのやり取りに欠かせない暗号化、電子署名、電子認証などのセキュリティ技術は、「暗号やデジタル署名のアルゴリズムが破られない」「暗号化や電子署名に用いる秘密鍵が安全に管理されている」という2つの前提のもとに成り立っている。RSA公開鍵暗号システムに代表される公開鍵暗号基盤は、「ふたつの巨大な素数をかけるのは容易であるが、その結果を元の素数に素因数分解することは困難」という性質に安全性の根拠を置き、各方面において使用されている。
RSA暗号の公開鍵が素因数分解に対する脆弱性を内包することは指摘されていたが、この脆弱性が発現する確率が極めて小さいことから、この脆弱性に対して注意が払われることはなかった。今回同社は、生成した公開鍵がこの脆弱性をもっているかどうかを判別する方法を研究し、高速かつ簡単にチェックするシステムを開発したもの。
現在、電子証明書を格納する媒体として、ICカードが使われるケースが増えている。同社では、自社ICカード発行受託ラインへの公開鍵脆弱性チェックシステムの組み込みを順次進めており、今後、脆弱性が確認された公開鍵は使用せず、安全性が確認された公開鍵のみを使用することにする方針。この結果、同社のICカード発行受託ラインで発行されたICカードは、公開鍵暗号基盤をより安全に、安心して利用できるICカードとなる。