パッケージ確定後、宮口氏とNECトーキン情報システム部の王豊氏が業務フローを調査。数日システムでの処理の流れを確認した。
上海事業所には「通常」と「預託」、大きく2つの業務の流れがあり、それらに対応するプロトタイプをNECソフト作成。その後2月から4月にかけて、宮口氏と王氏はひたすらB-Oneを操作し、パッケージの理解に努めた。
左より陶英氏、王豊氏、胡媚氏
導入に外部の力を借りないなら、自分達がパッケージに精通しなければならない。そこでNECトーキンでは、ERPについて2つの指針を制定している。
まず、徹底的に触って覚えるということだ。新しいシステムに触れるのは、怖いものだ。「変な処理をしたら?」「取り返しのつかないことにならないか?」と不安になる。だが、データを入れて処理を回してこそ、ERPの癖や特質、問題点を深く理解できるというわけだ。実際に宮口部長は、早朝から深夜まで、いたる所でデータを入力し、処理プロセスやデータの流れをチェックしたという。
B-Oneをほぼ把握したと考えられた4月に入り、ようやくユーザー向けのデモを実施した。エンドユーザーに確認はさせるものの、基本的にカスタマイズは「なし」だ。「こんなシステムはどうでしょう?」ではなく、「このシステムを使います」という宣言だ。
多くのERP導入ではこの段階でユーザーからの反発が起きるものだが、今回はそういった心配はまったくなかったという。理由は、事業所の担当者がR/3でERPの良さを理解していたこと。そしてB-Oneの操作性に問題がなく、比較的早くなじめたことだった。
また、前述の指針「触って覚える」は、エンドユーザーにも当てはまる。そこで導入に際してのサポートを3カ月と限定することとした。その期間はエンドユーザーからのどんなに細かい問い合わせにも応対する。その代わり、サポート期間内にしっかりとパッケージを理解してもらう。3カ月は電話対応に追われることになるが、その後は問い合わせはピタリと止むという。今回の上海事業所でも、7月に本稼働を開始し、すでに本社の手を離れて現地で無事に運用しているという。
今後NECトーキングループでは、R/3をグループシステム基盤としながら、新規の小規模事業所にはB-One、生産拠点には生産管理のERP「TPiCS」という3本立ての路線を推進するという。プロジェクトの数は多く、システム担当者の業務は多忙を極めている。だが、それぞれのパッケージや管理対象業務に対して精通し、かつエンドユーザーのパッケージに対する理解も深い。今後も、外部リソースに依存することなく、社内で完結したシステムプロジェクトを目指すと言う。