2006年のオープンソースソフトウェア(OSS)を取り巻く世界において、もっとも大きなできごとはマイクロソフトとノベルがLinuxの分野で提携したことであろう。かつての宿敵同士が、両者の製品を協調させると発表したこのニュースは、賛否を分かつ大きな議論を巻き起こしている。
ライセンスビジネスからマネージメントサービスへ
ノベルといえば、「NetWareの会社」というイメージがいまなお強い。ノベルにとってNetWareでの成功と、UnixWare買収など、その後のビジネスでのある種の迷走を経て、2003年にSUSE Linuxを買収し新たなOSSビジネスの領域にたどり着いた。
そんなノベルの当時から続く企業コンセプトは、「ネットワークインフラにおけるプラットホームベンダー」である、ということだ。これが、ノベルの企業カルチャーの根幹として、綿々と受け継がれている。ノベルは、Linuxだけの会社になったわけでも、ましてやOSSだけの会社になったわけでもないのだ。
「SUSE Linuxを買収した際には、NetWareの代替OSというようなことも言われた。しかしながら、ノベルとしては、今後OSSを扱っていくためにはサポートサービスが重要になるということを、当時から考えていた」と語るのは、ノベル アジア太平洋地域アライアンス担当副社長の平野正信氏だ。
当時のノベルは、SUSE Linuxのライセンスをどんどん売り始めるだろうという市場の期待に反し、ごくごくゆっくりしたペースでLinuxビジネスを開始した。そのころ平野氏は、現在では競合となるレッドハット日本法人の社長を務めていたが、その平野氏が外から見ていても「ノベルはゆっくりしている。いったいなにをしようとしているのか?」と感じていたという。
「プラットホームは、インフラという存在になってしまえば、ごく当たり前のものになる。当たり前のものの価格は限りなくゼロに近づいていき、従来のライセンス収入というビジネスモデルは成り立たなくなる。そうなったときには、ベンダーにとっての付加価値はサービスになる」(平野氏)
NetWareは、当時技術的に高い評価を受けていたわけではない。むしろ、どうしてこんなアーキテクチャなのかという疑問すらあったが、「軽い、落ちない、分かりやすい」というポイントが顧客の支持を得ていた。顧客の満足度が高いことで、結果的に「サービスがいい、サポートがいい」というのがノベルに対する評価となったのだ。Linuxのビジネスでも、同じようにできるというのがノベルのスタンスだ。
OSSの技術は、ベンダーからは独立したコミュニティが作っており、オープンなのでディストリビュータのあいだで技術的な中身について争っても差が出にくい。OSSを顧客が利用していく上で、本当に大事なものは何か。それがサポートサービスであり、便利に使うためのツールであり、それらこそがベンダーにとっての付加価値になる部分だ。