「GPLライセンスを使えば、我々がコアあたりスレッド数を増やすために行った設計をIBMやIntel、AMDなどの直接競合する他社が真似したくてもできなくなる。つまり我々が成し得た成果を単にコピーすることを潜在的に防止できる。彼らは自身のデザインだけでなく、他社の知的財産を明らかにすることも禁じられてしまうのを嫌がるでしょう」(Yen氏)
コアとスレッド
SunのNiagaraチップは現在のところ、汎用マルチコアチップとしては業界で最もアグレッシブな製品である。個々のシリコン半導体上に複数の処理エンジンを配置しており、これは少し前の、個々のチップにひとつの処理エンジンのみを配置する製品とは対照的である。Niagaraには8つのコアが搭載されており、各コアではスレッドと呼ばれる命令シーケンスを4つ処理できる。
Niagara 2ではコアは8つのままであるが、それぞれが8つのスレッドに対応できる。また数値演算処理能力も向上し、暗号化機能が内蔵され、入出力制御機能や10Gbpsのネットワーキング機能などを備える。SunのCEOであるJonathan Schwartz氏が2007年4月に語ったところによると、Niagara 2を搭載したサーバは2007年第3四半期に出荷される。
Sunではこの複数スレッドに対応したマルチコアアプローチは、ソフトウェア業界で同社が必要とする一部のパートナー企業にとっては習得が容易ではないと認識している。そのため、SunがOpenSPARCプロジェクトを選択したもうひとつの理由には、こういった企業のサポートを後押しすることがある。
Yen氏は次のように述べている。「このマルチコア、マルチスレッドという方向性は、コンピューティングの効率化と消費電力削減の両方の側面から、進むべき方向としては決して間違ってはいない。ただしこれは、ハードウェアやプロセッサのメーカーだけで成し得ることではない。システムソフトウェアからアプリケーションソフトウェアまで、すべてのソフトウェア関係者が同じ方向を向いて、参加することが求められる。OpenSPARC S1をオープンソース化することは、ITコミュニティーに同じ方向に向かって進んでほしいと促す強力なメッセージでもある」
ただし、現時点でオープンソースを利用した派生製品に取り組んでいる前述の2社がさほど大胆な取り組みをしているわけではないことも注目すべきである。Polaris MicroとSimply RISCの両社とも、デザインは4スレッドのシングルコアである。
Niagara 2のオープンソースプロジェクトにはさまざまな難問が立ちはだかっている。そのひとつが輸出規制である。アメリカ政府は暗号化技術の輸出を規制している。
Yen氏は次のように説明する。「仮に私が今日、楕円曲線暗号化アルゴリズムの実装を公開したいと考えた場合、アメリカ政府がそれを許可するかどうかはわからない。解決しなければならない問題や明確にしなければならない問題は多く、認可を取る必要もあるかもしれない」
プログラマブルチップ
チップデザインのオープンソースプロジェクトには、ソフトウェアのオープンソースプロジェクトとは全く異なる側面がある。