多くの製造メーカーにとって、製品販売後のアフターサービス分野の在庫最適化は手つかずの領域だった。ところが最近になって大きなコスト削減余地のあるこの分野に注目が集まっている。同分野のパイオニアであるサービジスティクス・アジアの代表取締役社長、清水博氏に話を聞いた。
--最近、欧米のITベンダーはアジアの本拠をシンガポールや豪州に置くことが多いですが、日本を本拠にしたのはなぜですか。
清水 日本市場の規模はワールドワイドで2番目の大きさです。サービジスティクスのシェアをアジア内で見ると、日本のシェアは全体の約90%を占めています。われわれの製品は、サービスパーツの計画系がメインですので、製造業のマーケット規模が圧倒的に大きい日本にアジア拠点を持ってきたのは必然でしょう。
--そのサービスパーツ分野で、サービジスティクスが提供するソリューションはどのようなものですか。
清水 ストラテジックサービスマネジメント(SSM)ソリューションを提供することで、製造業者が製品を顧客に販売した後のプロセスであるアフターサービス分野の最適な意思決定を支援しています。具体的なソフトウェア構成は、「Parts Management」「Pricing Management」「Workforce Management」の3つです。
--まず、Parts Managementで実現できることについて聞かせて下さい。
清水 Parts Managementは我々の主要製品で、補修部品のグローバルネットワークを一元管理し、需要予測、在庫計画、補充計画の最適化を支援しています。需要に対して在庫を提供できる割合をサービス率と呼びますが、このサービス率を高めながら在庫を抑制することができるのです。
--在庫を削減するにもかかわらず、サービス率を高められるのはなぜですか?
清水 一見矛盾するように感じられるでしょうが、これを実現するシェアリング機能があります。拠点間で部品情報を同期化し、共有することで、複数の過程で在庫を融通し合うことができるのです。これにより、取り置いておくべき部品点数の最小化と在庫日数の短縮が可能になります。
--次に、Pricing Managementを使って実現できることについて聞かせて下さい。
清水 部品を売るとき、顧客の満足度を高めつつ売上や利益を上げていくためには、部品の適正な価格設定をすることが不可欠になります。Pricing Managementでは、ユーザー企業の補修部品の価格管理を行い、価格を最適化することによって、売上を向上させながら利益も最大化することを支援します。
--製品価格を安く抑えて保守で利益を出そうという戦略と、製品の販売で利益を出して保守は顧客サービスとして原価割れしない程度の価格に抑えるという戦略がありますが、Pricing Managementはどのような戦略モデルを採っていますか。
清水 われわれの顧客は、純正部品のメーカーです。彼らが非純正部品メーカーに対してどう戦っていくのかを考えたとき、コストプラスアルファの価格でなく市場価格を基準に価格設定をしなくてはいけません。
我々は、業界のスタンダードであるマーケット価格を算出するための調査体制を整えています。これによって、市場調査に基づいたデータをシステムに投入し、価格と需要の関係を計算させることができ、数量のシェアを最大化するポイントと利益を最大化するポイントを決定することができます。自動車部品に特化した製品という意味では、Pricing Managementは世界唯一の製品です。
--世界唯一という根拠は?
清水 市場調査のノウハウです。たとえば、トヨタのA製品は日産のB製品、ホンダだとC製品、GMだとD製品に相応するというように、特定の自動車部品の価格、素材、機能を十分に評価した上で分類するナレッジを蓄積しています。