だがおそらく、こうした懸念は2008年2月には払拭されているだろう。というのも、それまでにAppleが「OS X 2.0」を出荷するか、「Mac OS X Leopard」の技術を借りてiPhoneの安定性を高めるか、あるいはその両方の作業を済ませているはずだからだ。Jobs氏は、開発者がiPhoneで稼動するアプリケーションを開発するためには、何らかのデジタル署名アーキテクチャを厳密に守るよう義務づけられることになるだろうとほのめかしている。これはNokiaが採用しているものと同じようなものと思われる。開発者コミュニティーの賛同を得られるかどうかは、これからの成り行きを見守るしかないが、開発者の署名入りのアプリケーションでも、iPhoneが完全にロックされた状態よりは良いとして受け入れている開発者もいるようだ。ただ、知ってのとおり、待ちきれずに着手した開発者もいる。
iPhoneが発売されるや否や、ハッカーたちは、サードパーティーによるiPhone用アプリケーションの開発やインストールを可能にすべく、「ロック解除」やハッキングに取りかかった。進取の気性に富む開発者はiPhoneの新しい利用法を考え出し、一夜にして、小粒ながら有用なアプリケーションが次々と誕生した。
だが、問題はAppleがこれを認めなかったことだ。事実、サードパーティー製アプリケーションをiPhoneへインストールすることは契約に違反する行為で製品保証は無効になると、iPhoneの使用許諾契約に明記されている。先ごろ公開され、自作アプリ派の非難の的となっているソフトウェアアップデート1.1.1ではこの方針が強化され、いかなるサードパーティーのアプリケーションもiPhoneから一掃されてしまった。
インターネット上に怒りが噴出し、Jobs氏とAppleに対して、ユーザーのコンピューターにまつわる生活の全てに干渉し、かじりかけのリンゴ(Appleのロゴマーク)だらけにすることにしか関心がない、支配欲に取り憑かれた連中だとの罵り文句が飛び交った。Apple関連の話題をいつも面白い切り口から取り上げる「The Macalope」氏は、AppleのSDKに関する発表を受け、17日には早くも「さて、次の不満の矛先はどこ?」と題したブログを投稿している。
今回発表したSDKにより、人々のiPhoneに対する考え方は変わるだろう。例えばResearch In MotionやMotorolaなら、企業向けの電子メールへ安全にアクセスできる「BlackBerry」および「Good Mobile Messaging」ソフトウェアをiPhoneに移植することも可能になる。また、サードパーティーのブラウザ開発者は、現行のiPhone向けSafariが対応していないFlashやJavaをサポートする製品をリリースできるわけで、これが実現すれば、真の意味でフル機能のインターネットをポケットサイズに収めたことになる。さらに、週末になると地下の一室でソフトウェア開発に励む独立系開発者は、タッチスクリーン・インターフェースの長所を生かしてあっと驚くような素晴らしいことができる全く新しいアプリケーションを考え出し、そのソフトウェアを使って事業を立ち上げるはずだ。
少なくとも今の段階でSDKがサポートしない機能の1つは、SIMロック解除だろう。Appleの広報にこの質問を電子メールで投げかけてみたが、まだ返答はない。しかし、AT&Tが現段階でアンロックを許すとは考えられない(これは、AT&Tがどんな選択を迫られたとしても未来永劫アンロックを許さないだろう、という意味ではない)。AppleとAT&T間の独占契約期間は2年から5年と報道されており、そうであれば、Appleが今回のSDKでiPhoneのロック解除を認めるということは、不可能でないにしろ、可能性は低いはずだ。