マイクロソフトの買収企業統合力は?--実績から検証

文:Ina Fried(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、佐藤卓、小林理子

2008-02-14 13:04

 企業買収となるとOracleにはおよびもつかないとは言え、Microsoftも大金の詰まった財布を開くことに慣れてきつつあるようだ。

 Microsoftは従来、有力企業の大型買収よりは、技術目当ての小規模な買収に主な重点を置いてきた。そんな同社が今、ネットのパイオニア企業である米Yahooを数百億ドルで買収しようと悪戦苦闘しているのはご承知の通りだ。

 調査会社Directions on MicrosoftのアナリストMatt Rosoff氏は、今回のYahoo買収提案について「Microsoftにとって今までとは異なるタイプの買収だ」と述べた上で、「これは新しい考え方によるものだ」と語っている(Rosoff氏は「CNET Blog Network」の執筆者の1人でもある)。

 だが、Microsoftも、長い歴史の中では比較的大規模な買収をいくつか実施してきた(詳細は表を参照)。

Microsoftのこれまでの大規模買収
企業名推定費用
Fast2008年12億ドル(買収提案中)
aQuantive2007年60億ドル
Tellme2007年8億ドル
Navision2002年13億3000万ドル
Great Plains2001年11億ドル
Visio1999年13億ドル
Hotmail1998年4億ドル
WebTV1997年4億2500万ドル

 Microsoftによる大規模買収のいくつかは、インターネット企業が対象だった。1990年代にさかのぼると、MicrosoftはWebTV NetworksとHotmailを買収しており、それぞれの買収に数億ドルを費やしている。

 テレビで電子メールを使えるサービスを提供していたWebTVは、加入者ベースがだいたい100万人で横ばい状態となったため、その点ではこの買収は高くついた。しかし、その技術と人員は、現在IPテレビに取り組んでいるMicrosoft TV部門の基礎を築くのに役立った。また、Hotmailは長年にわたって放置されていたが、Microsoftが「Windows Live」の拡大を押し進める中で、新たな重要性を持つようになった。経済的な見返りという意味では、ウェブベースの電子メールから大きな利益を上げることができた業界大手企業はまだないが、Google、Yahoo、Microsoftは、状況を変えるべく懸命に取り組んでいる。

 Microsoftはまた、数件の買収を実施してビジネスアプリケーション分野に参入している。とりわけよく知られているのは、2001年のGreat Plains Softwareと2002年のNavisionの買収だ。これによって、Microsoftは「Microsoft Dynamics」製品ラインを揃え、それなりの事業規模を持つようになったが、製品統合に至る取り組みは、技術の面でも顧客の支持獲得の面でも厳しいものがあった。

 Microsoftは、両社を買収したときにはもっと明るい未来を描いていたのだが、「期待通りにはならなかった」とRosoff氏は指摘する。

 2007年には、aQuantiveを約60億ドルで買収し、さらにTellme Networksも買収したが、Microsoftがこの2件の買収をうまく生かせるのか判断するのは時期尚早だ。もちろん、Microsoftは両社に大きな期待をかけており、Tellme NetworksにはMicrosoft Office事業からモバイル検索まであらゆる分野で貢献することを、aQuantiveにはオンライン広告分野でMicrosoftの地位を向上させることを期待している。ただし、aQuantiveの買収がオンライン広告分野への大きな賭けだとするなら、Yahooの買収でMicrosoftがやろうとしていることは、これに倍するどころではないとてつもない賭けと言えよう。

 Microsoftはまた、統合の問題に対処できる根拠としてこれまでの実績を挙げることがよくあるが、今までの買収は、ほとんどすべてが同社にとって新しいビジネスへの進出であり、重複する部分が最小限だったことには留意しておくべきだ。Yahooの買収は、重複部分が非常に多くなるし、企業文化の問題が横たわっているのは言うまでもない。もちろん、Microsoftの呼びかけにYahooが承諾の返事をしなかったことも忘れてはならない。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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