Microsoftの幹部たちは、「Windows Vista Capable PC」プログラムの分かりにくいシステム要件によって自分たちが厄介な問題に巻き込まれる可能性を、2005年の時点ですでに認識していた。にもかかわらず同社がPCメーカーの反対を押し切ってこのプログラムを実施したのは、Intelから強い要請を受けたためらしいことが、Microsoftが訴えられている集団訴訟で公開された多数の電子メールから見えてきた。
Intelのソフトウェアおよびソリューショングループ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるRenee James氏は、2006年初めにMicrosoftのWill Poole氏を説き伏せ、Microsoftが提案した「Windows Vista Ready」販売プログラムのシステム要件を変更し、Vistaの新ユーザーインターフェース「Windows Aero」を実行する能力のない旧型の統合グラフィックスチップセットを要件に含めさせることに成功した。Intelは当時、Aeroを実行できる新型の「945」チップセットを、Microsoftの提案するアップグレードキャンペーンのスケジュールに合わせて出荷できそうにないという懸念を抱いていた。
このような経緯から「Windows Vista Capable」のロゴが作られ、その結果、Microsoftは裁判所に呼び出されることになった。同社が直面している集団訴訟の原告は、2006年後半にいわゆるWindows Vista Capableマシンを購入した人たちだ。彼らは、購入したマシンが「Windows Vista Home Basic」しか実行できず、Aeroを使えないことに後から気づいたのだ。だが混乱を招く可能性は、2006年3月のCNET News.comの記事にあるようにMicrosoftの社外で十分に認識されていたし、今回明らかになった電子メールのやり取りが示すように、Microsoftの社内でもはっきりと認識されていた。
これらの貴重な電子メールは、訴訟の過程で公開されたものだ。「Seattle Post-Intelligencer」紙のTodd Bishop氏は、MicrosoftがWindows Vista Capableプログラムの要件を決める際に、少なくともある程度、Intelにとって有利になるように取り計らったのではないかと疑われる電子メールを数多く取り上げている(裁判所が公開したすべての電子メールは、このPDFファイルで読める)。公開された電子メールの一部は裁判所によって編集されている。本記事で引用した電子メールは、Seattle Post-Intelligencerが取りまとめてBishop氏が米国時間2月27日にブログで公開したPDFファイルから、誤字も含めてそのまま転載したものだ。
「結局のところ、Intelの四半期の売り上げを助けるためにわれわれが要件を下げた結果、Intelは『915』グラフィックスチップセットを搭載したマザーボードを販売し続けることができた」と、MicrosoftのJohn Kalkman氏は、Scott Di Valerio氏に宛てた2007年2月の電子メールに記している。Di Valerio氏は当時、MicrosoftでPCメーカーとの関係を管理する立場にいた人物で、最近になってLenovoに移っている。システム要件の変更が行われたのは2006年1月のことで、現在Microsoftの新興成長市場担当コーポレートバイスプレジデントを務めるPoole氏によって正式に実施された。当時Vista開発担当幹部だったとみられるJim Allchin氏(今はMicrosoftを離れている)には、何も知らされていなかった。