アイ・ティ・アール(ITR)は11月9日、国内IT投資動向調査の速報を発表した。
同調査はITRが2009年9月11日から10月9日にかけて実施したもので、ITRの顧客企業および主催セミナーの出席者などから、国内企業の情報システム系および経営企画系部門の部長級相当の役職者3000人(1人1社)に対して、アンケート用紙による記入もしくはウェブ経由で回答を受け付けた。その結果、400社から有効な回答を得ました。 その結果、2009年度(2008年4月〜2009年3月)のIT予算の増減実績は、「増額した」と回答した企業が17%で、そのうち20%以上の増加が6.0%、20%未満の増加:10.5%だった。これに対し、「減額した」と回答した企業は45%で、そのうち20%以上の減少:15.3%、20%未満の減少:30.0%となった。
2010年度(2010年4月〜2011年3月)の増減見通しは、IT予算の減額を見込む企業の割合が20%台半ばまで減少した。この結果から、ITRでは「投資意欲の低下傾向に一定の歯止めがかかる」と見ているが、増額を見込む企業の割合が微増にとどまったことから、「依然として厳しい状況にある」と予測している。
ITRでは「2010年度へ向けた国内企業のIT投資意欲は、本格的に回復するとまでは言い難く、下げ止まりといった段階にとどまると予想」している。
また、企業の売上高に対するIT予算額の比率は、2009年度は前年度の2.8%から0.2ポイント下降して2.6%となり、2006年度に過去最高の3.2%を記録して以来、3年連続の減少となった。
コスト削減策、6割超の企業で出張と交通費の抑制
2008年秋以降、企業で実施されたITにかかわるコスト削減策の実施状況では、「2008年度内に着手・強化した施策」として最も多くの回答を集めたのが「全社的な出張・交通費支払いの抑制」だった。この回答は、2009年度に入ってから着手および強化した企業と合わせると、実施済みの企業が6割以上に上ったという。
そのほか、「ハードウェアの延命措置」「ベンダーとの契約の見直し・再交渉」「開発費用の削減」「保守開発・改修の抑制」といった、外部委託にかかわるコスト削減策が高い実施率だった。
一方、人材にかかわるコスト削減策は、相対的に未着手の企業が多いという。また、近年注目されている「既存システムのSaaS、クラウド・サービスへの移行の検討」も、現時点での実施率は約15%と低い水準にとどまった。
調査の結果を受け、ITR 代表取締役の内山悟志氏は、「景気後退が企業のIT投資にも大きな影響を及ぼしていることが改めて確認される結果となりました。ITにかかわるコスト削減に関しては『ITそのもののコスト削減』と『ITによるコスト削減』の2 つがあります。短期的かつ直接的には『ITそのもののコスト削減』が着目される傾向にありますが、今後は長期化が予想される経済的停滞と企業活動の構造的課題を念頭に置き、『ITによるコスト削減』を計画的に推進していくことが推奨されます」と分析している。