日本IBMは1月21日、報道関係者およびアナリストを対象に、BAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)サービスへの取り組みについて説明した。
BAOは、社長の橋本孝之氏が、日本IBMにおける「2010年度の重点領域」と位置づける事業である。IBMの持つ最先端の分析技術を活用したビジネス最適化を行うための支援サービスで、同社のコンサルティングスキルや、世界中の研究部門における数理分析の知見、情報管理や高度なデータ分析のためのツール、膨大なデータを高速に処理するハードウェア、それを提供するサービスから構成される。
膨大な情報のなかから、必要とされる情報を抽出し、データの傾向や因果関係を見つけだすための分析や、意思決定を行う際の裏付けとなる確実性や予見性を提示して、ビジネスの最適化を支援するものとしている。企業は、これらの技術とサービスを、収益拡大、リスク管理、コスト削減などに生かせるという。
日本IBM、グローバル・ビジネス・サービス事業ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション パートナーの赤阪正治氏は、「2004年からの5年間で、企業が取り扱うデータ量は約5倍に増加している。しかも、企業内の基幹システムのデータだけでなく、インターネットで提供されるようなデータや、センサから得られる情報など、情報ソースが多様化している。さらに、PowerPointのデータやテキストデータ、音声データ、画像データというようにデータベースでは扱えない非構造型データの比率が増加している。こうした膨大な、様々な形式のデータを活用して、計算処理やデータ分析、モデリング、データマイニング、テキストマイニング、最適化などを図るニーズが高まっており、これに伴うコンサルティングサービスが求められていると判断している」とする。
同社では、公共、金融、流通、製造、通信・メディアの分野において、27種類のBAOソリューションを用意している。統計解析や分析、予測で定評がある「SPSS」や、レポーティングに特徴を持つ「Cognos」、最適化のエンジンである「ILOG」などの、IBMが持つソフトウェアを活用する。これに世界8カ所の研究拠点のノウハウを加え、東京をはじめとする全世界6カ所のアナリティクス・ソリューション・センターとの連携を図りながらサービスを提供していくという。
「ソリューションメニューに関しては、この半年間に、ニーズがないものを落としたり、新たなニーズが見込めるもの、海外の実績をもとに新たに追加したものもある。今後、さらにBAOソリューションの数を増やしていきたい」(赤阪氏)
海外での実績を元にしたメニューとしては、収集したデータの関係をリアルタイムで識別し、個人判別に役立てる「個人識別ソリューション」がある。顧客を特定することで、不正利用や不正行為を防止したり、同一顧客にダイレクトメールを発信しないようにするといった活用が可能になるという。また、「経営支援ソリューション」では、コンタクトセンターに寄せられる顧客の声をデータとして可視化し、顧客の要望に応じた商品、サービス開発に役立てることにより、収益向上などが図れるとしている。
合わせて、日本IBMではBAOサービスに関わる組織体制の強化を図る。BAOサービスは、2009年7月に250人体制でスタートしたが、2010年1月には、これを400人体制としたほか、年内には500人体制にまで拡大する計画だ。
BAOサービスは、基幹システムの構築経験が豊富な人材を中心に構成されている。基幹系システム構築の知見に基づくデータの配置、運用管理のノウハウをBAOのシステム構築に生かしたり、ビジネス分析やビジネス最適化を行い、これを企業のオペレーションにどう生かすかといったアイデアを創出できるとしている。
赤阪氏は「BAOサービスは、この半年間で、製造、金融などの大手企業を中心に3桁の案件数を達成しており、今後も旺盛な需要が見込まれる」と述べ、国内におけるBAOサービス事業を加速させていく姿勢を示した。
「IBMがBAOサービスを提供する必然性を前面に打ち出していきたい。IBMが持つソフトを活用してサービスを提供すること、世界のIBMの研究拠点と連携することを、IBMの価値として展開していく」(赤阪氏)