目まぐるしく変化するビジネス状況において、その変化にスピーディに対応する能力は、企業が生き残っていくために必須のものとなりつつあるようにさえ感じられる。そうした変化への対応を支援するIT側からの取り組みとして「ビジネスプロセスマネジメント(BPM)」が注目を集めている。
企業の競争優位性を高めるために、ビジネスの現状をリアルタイムに把握し、その結果から自動的に対応を行ったり、迅速に意思決定を行うことの必要性は認知されているにも関わらず、実際にそれを企業レベルで実現できているケースは少ないという。
英国のIT専門調査会社であるVanson Bourneが2009年10月に北米と西ヨーロッパの400の企業に対して行った調査によれば、経営者がビジネス上で重要だと考えている項目として「リアルタイムな情報に対して迅速に反応すること」と回答した企業は94%に達したという。一方で、「現在のビジネスは、情報に対してリアルタイムに反応できている」と回答した企業は、わずか8%にとどまったという。
こうした「理想と現実とのギャップ」を埋めることは、なぜ難しいのだろうか。
エンタープライズ向けに「接続」「集約」「可視化」といった領域にフォーカスしたソフトウェアを提供している米Progress Softwareのシニアバイスプレジデントで、CTO(最高技術責任者)兼事業開発責任者を務めるJohn Bates氏は、多くの企業がビジネスの状況にリアルタイムに反応できない理由として「処理すべき情報の増大」と「ITシステムの複雑化」を挙げる。
「通常、企業には過去20年以上かけて組み上げられてきた多くのレガシーシステムが存在し、その複雑さは増し続けている。そのため、企業はビジネスプロセスのどの部分を、どう改善すれば効果があるのかが分からなくなっている」(Bates氏)
Progress Softwareでは、3月に「Responsive Process Management」(Progress RPM)と呼ばれるスイートソリューションを発表した。今後、日本でも推進していく予定のこのソリューションでは、「トランザクションの可視化」「複合イベント処理」「ビジネスプロセス管理」といった機能を統合された形で提供し、企業がビジネスの状況をリアルタイムに把握し、迅速に反応することを支援するという。
トランザクション可視化の部分は「Actional」、複合イベント処理については「Apama」、ビジネスプロセス管理については「Savvion」という、Progressが持つそれぞれの製品を連携させて実現する。
Bates氏は「ほとんどの企業では、既にある程度企業システムの統合が行われており、何らかのデータサービスは存在する。レガシーな環境なりのプロセスができている。RPMで提供するのは、その基礎の上で、まず、イベントをキャプチャし、プロセスを発見し、トランザクションの可視化を行うこと。さらにそこから、複合イベント処理や、トランザクションパターンの迅速なモデル化を行い、ビジネスルールやビジネスプロセスを管理、分析するための仕組みを提供していく」と語る。
これらの機能を一元的に管理するため、今回新たにスイートに用意された仕組みが「Progress | Control Tower」と呼ばれるものだ。Control Towerは、いわゆる「ビジネスダッシュボード」のような形で、ユーザーから見た際のフロントエンドとして機能する。Actional、Apama、Savvionで処理されているデータを集約した形でリアルタイムに可視化できるほか、そこで可視化されたイベントやプロセスに対する分析、最適化、カスタマイズ、評価指標の作成といったアクションを起こせるようになっている。プロセスやルールのカスタムに当たっては、GUIベースのモデリング環境が用意されており、ノンコーディングでの迅速な対応が可能だ。Bates氏は、「その名のとおり、空港の管制塔のような役割を果たす」と語る。