電源やラックなど物理インフラを提供するエーピーシー・ジャパン(APCジャパン)はデータセンター内のIT機器などを冷却するための新しい冷媒ポンプ式システム「InRow OA」を9月1日から販売する。
今回発表された冷却システムは、ラックの上部に設置して暖気の排熱を吸い込んで冷却するInRow OAと、データセンターの外部にも設置可能な、冷水と熱交換した冷媒をInRow OAに供給する冷媒分配器(Refrigerant Distribution Unit:RDU)で構成される。InRow OAは、データセンター内のサーバなどの熱源に対して、最大27キロワット(kW)の冷却を供給できる。RDUは、160kWの最大容量を持ち、1台につきInRow OA最大5台分をサポート、外部チラーに接続して、冷水と冷媒の間で熱交換を行う。
InRow OAについてAPCジャパンの安藤敦氏は、「ラックの天井スペースに設置することから、冷却システムを導入するためにラックを移設せずに導入できる。また、既設のデータセンターの構造を改築したりする必要もない」とそのメリットを強調している。既存のものと比較して、必要となるスペースは60%以下と同氏は説明している。
InRow OAは、下部から吸い込んだ排熱を必要な温度まで冷やして再び排出する。冷気は下に流れ、サーバなどのIT機器の吸気口に供給されることになる。RDUは、冷水システムから送られる冷水と熱交換した冷媒をInRow OAとの間で循環させるという仕組みになっている。
今回の仕組みではデータセンター内に水を通す必要がないことから、水を持ち込まないデータセンターにも対応することができ、今までの運用手法を継続して採用できるというメリットもあると、安藤氏は説明している。また、冷媒ポンプを使用することで低消費電力となっており、導入コストも含めて総所有コスト(TCO)を削減できるという。InRow OAとRDUの価格は、10kWラック14本にシステムを導入した場合で、アクセサリ類を含めて2900万円から、となっている。
APCジャパンは、今回のシステムのターゲットとしてデータセンター事業者、大都市部にデータセンターやサーバルームを稼働させている大企業などを掲げている。販売目標は3年間で200セットとしている。