物理と仮想で異なる構成管理の難しさ
運用面の課題としては、構成管理の難しさもトピックとなった。
「物理環境と仮想環境では管理項目が変わってくる。私たちは今まで物理サーバを管理していく前提でデータベースを構築していたが、時代が仮想化へ移行しても既存のものを壊すわけにはいかない」
参加者の一人は、現状と今後で構成管理の方針決めに迷いが生じているのだという。そのうえで続けた。
「サービスを提供する側として、今の仮想化ではミッションクリティカルな環境を受け入れづらい、という課題もある。もちろん企業としては新しい技術の導入が必要不可欠だが、そこまで仮想化に依存していいのか、こうしたギャップをIT部門がどう考えていくべきなのか、分からない状況です」
「仮想化だから安い」とは限らないコストの悩み
顧客に仮想化を提案している企業の参加者からは、仮想化が一般化しつつある中で「ミドルウェアのライセンス体系が追いついていない状態だ」という疑問も呈された。
「例えば、仮想化することでサーバの保守期限などが塩漬けとなり、ずっと使えてしまう。だから、最初から仮想化を望むお客様もいる。しかし、実は仮想化に使っている部分のライセンス費用だけ支払えば良い、とういわけではない。仮想化対応のハイエンドなサーバに対してすべてのライセンスがかかれば、結果として小規模でもスタンダードサーバを数台買えるほど高額になってしまう」と、問題点について語る。
実際、現在は仮想化向けにミドルウェアのライセンス体系を整えているベンダーはごくわずかで、大半はCPU単位の課金を採用している。ベンダー側でも対応を迷っている、というのが正直なところだろうが、今後ますます仮想化が普及するにあたり、早急な解決が必要な課題の一つといえるだろう。
参加者からも一様に「ライセンスは本当にこれからですよね」という声が聞かれた。
また、社内で仮想デスクトップ環境の構築に取り組んでいるSIerからは、「これは導入前の課題だが、なかなか経営者層に費用対効果を数値化(して説明)できないのが悩み」という発言もあった。同社では社内向けだけでなく、顧客からも「経営者層へ仮想化を訴求するため、一緒に資料作りをしてほしい」といった要望もあるそうだ。ミドルウェアのライセンスも含め、やはりどの企業でもコストや費用対効果は特に重要なポイントになっている。
座談会では、このほかにも「安価なディスクを利用して、データをすべて飛ばしてしまうというトラブルに見舞われた経験がある」「ストレージメーカーではアプリケーションからEnd to EndのI/Oまでを保証できないため、SIerとしてもう少し良いツールを提供したい」と、実際の失敗談や今後の取り組みなども飛び出した。
このように、企業が仮想化に際して直面している問題や課題はかなり多い。しかし裏を返せば、これだけ問題が多く挙がるのは、それだけ各企業が本気で仮想化環境の構築に取り組んでいる証といえるだろう。仮想化関連の問題は未だ山積の段階だが、それは過渡期の今だからこそ、かも知れない。
今後の仮想化がどのような未来へ向かうのかは、3つ目のテーブルで話し合われた。