終わりのない“KAIZEN”を生産現場から全社に拡大--リコーユニテクノ(前編)

田中好伸(編集部)

2011-02-24 18:45

 「KAIZENに“終着駅”はない。『もうKAIZENできない』とは言わない」――。事務機器大手リコーグループの生産関連会社であるリコーユニテクノの鍋田利夫氏(経営管理本部本部長)は、同社に根付く「KAIZEN」活動をこう表現する。

 1968年に設立された同社(当時は草加リコー製造、1990年に現社名に変更)は、A0サイズまで対応できる広幅デジタル複合機や広幅高速プロッタ、ファクシミリなどOA機器の設計製造が主力事業。1994年からは複写機で使われるトナーカートリッジのリサイクル、製品リサイクル事業も展開している。従業員数は485人、売上高は80億円(2010年3月期)という規模だ。

鍋田利夫氏 経営管理本部本部長を務める鍋田利夫氏

 リコーグループは、1995年から中国に生産会社を立ち上げるなど、海外へ生産体制をシフトしていった。その流れの中でリコーユニテクノは、将来を見据えて「売り上げの減少が予測され、売り上げが半分になっても利益を出せるような体質に強化する必要がある」(鍋田氏)と判断して、1997年から現場を起点としたKAIZEN活動を強化してきている。

徹底した見える化

 そのKAIZEN活動活性化の一端として、三位一体の小集団KAIZEN活動がある。問題の提起者(気づき)、アイデアの提供者、改善の実施者で1件のKAIZENを完成させる三位一体の仕組みである。作業者が、やり難いと感じても、ほとんどの作業者は我慢をして、作業を継続してしまう。また、気づきはするのだが、自分で改善できない人が多くいる事も事実である。

 この環境を改善しようとして取り組んだのが、三位一体の小集団KAIZEN活動だ。現在、KAIZEN提案件数は毎月700件にもなるという。その成果は毎月開催される「KAIZEN事例報告会」で発表、審査され、優秀な事例に対してインセンティブとして賞金が与えられることになっている。この報告会には社長や取締役が出席していることが重要であり、社員のモチベ-ションアップにつながっているという。

 同社の経営管理本部経営戦略室ITS推進グループリーダーの馬場保氏は「工場には、たとえば前日までコンビニで働いていたような人もいます。そうした体制でも製品品質を維持向上させるためにKAIZEN活動を展開している」と、KAIZEN活動の重要さを説明する。つまりリコーユニテクノのKAIZEN活動の思想は、人にやさしい(優しい/易しい)工程作りでもある。

 このリコーユニテクノのKAIZEN活動の特長を短い言葉で表現するなら「徹底した“見える化”(可視化)」が相応しいだろう。生産現場での見える化対象は大きくふたつある。ひとつはムダの見える化、もうひとつは正常異常の見える化である。

 たとえば生産現場でのムダの見える化とは、作業動作を“正味作業(価値を生む作業)”と“付帯作業”そして“ムダ”に分類して、ムダな動きがあることを、誰でも正しく認識させるということを行っている。こうした見える化は、生産作業にとどまらず、生産工程というプロセスにも及び、効率化が図られている。ちなみに、同社のこうしたKAIZEN活動は、NHKの海外向けニュース番組で取材され放送されている。日本国内はもちろん海外の企業も同社の現場を見学に訪れている。

馬場保氏 経営管理本部経営戦略室ITS推進グループリーダーを務める馬場保氏

全社の業務プロセスを洗い出し

 冒頭の「KAIZENに“終着駅”はない。『もうKAIZENできない』とは言わない」という鍋田氏の言葉が示すように、リコーユニテクノのKAIZEN活動はさらに広がる。同社は2006年から、生産現場以外の間接業務でもKAIZEN活動を行っている。業務プロセスを会社横串でとらえて全体最適化を図ろうとKAIZENの範囲を拡大させたのである。馬場氏がこう語る。

「減産になると生産ラインの人数は目に見えて減る。しかし、間接業務の人数はどうでしょう。生産量が減ったにもかかわらず、相変わらず間接部門は『忙しい』を連呼している」

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