シスコシステムズは11月17日、企業向けタブレット端末「Cisco Cius」の出荷を開始した。Ciusは昨年の同社イベントで初めて日本で公開されていた。
OSとしてAndroid 2.2をベースにしているCiusは背面に5Mピクセル、前面に720×480ピクセルのカメラを搭載。7インチの画面で720pの高精細(HD)での映像通信が可能だ。同社のハイエンド映像会議システム「Cisco Telepresence」との相互運用性が確保され、安定した通信回線さえあれば、どんな場所からでも臨場感がある映像通信に参加できるという。
通信としては現段階でWi-Fiを搭載。シスコの大中裕士氏(コラボレーション事業コラボレーション営業部部長)によると、3G/4G網に対応できるよう「現在携帯電話事業者との検討を進めているところ」だという。大中氏はCiusについて企業と意見を交わす中で「3G/4G網に対応しなくても、モバイルのWi-Fiルータがあればいい」という声があることも明らかにしている。
AndroidタブレットのCiusはAndroid Marketからアプリケーションを導入できるが、シスコが提供する企業内コラボレーションツール「Cisco Quad」や同社のSaaS型ウェブ会議「WebEx Meeting Center」が標準で提供され、プレゼンスやインスタントメッセージング(IM)といった機能も提供される。
シスコでコラボレーション事業を担当する執行役員の公家尊裕氏はCiusについて「新しい仕事の環境、ワークスペースを拡大させる」ものと表現する。Ciusは単なるAndroidタブレットというよりも、同社の「Cisco Virtualization eXperience Infrastrucuture(VXI)」にアクセスするためのクライアント端末という性格があるからだ。
VXIは、仮想デスクトップ基盤(VDI)を強化、拡張したものだ。VDIはVMware ViewやXenDesktopでサーバにある仮想デスクトップにアクセスする。VDIで難点とされる映像や音声などのリッチメディアを処理できるようにすることで、VXIはVDIと映像通信を両立させることを目的としている。
Ciusはメディアステーションに接続すれば、キーボードやマウス、外部ディスプレイで仮想デスクトップにアクセスすることになる。公家氏はCiusについて「ただのタブレットではない。PCと電話、映像端末のオールインワンの1台を体現している」と説明している。
「今の会社では、机に電話とPCがあり、会議をする時はビデオ会議システムがある部屋に行くことになる。Ciusは1台でこれらをまとめて処理できる」(公家氏)
現在、企業内の一般的な職場では、デスクトップPCとディスプレイと電話があり、その消費電力は160Wになると大中氏が説明。これをCiusに置き換えると、メディアステーションとディスプレイをあわせても60Wにまで消費電力を抑えられるとしている。
現在のPC環境を変えようとするシスコの試みはCiusだけではない。「Cisco EnergyWise」と「Universal Power over Ethernet(UPoE)」だ。
EnergyWiseは、ネットワーク上にある機器の電力を監視や管理して消費電力を制御するという技術であり、同社が独自に開発を進めている。現段階では、ルータやスイッチだけでなく、PCの電源も制御するところまで来ており、将来的にはビル全体の電源を制御することを目指している。