「インフォメーションテクノロジはビジネステクノロジに変わっていく」――。8月から新会計年度に入ったシスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏は、2012年度(2011年8月~2012年7月)の経営ビジョンとして「Ignite Japan 2012」を掲げ、その中の大きなキーワードとして“ビジネステクノロジ”が企業の新しいビジネスをけん引していくものと説明している。
平井氏は2010年8月にシスコ日本法人社長に就任、2011年度の経営ビジョンとして「Ignite Japan」を掲げており、「元気がない日本の経済や社会を燃え上がらせたい」という思いが込められていた。平井氏によると、シスコ日本法人は2011年度に「2ケタの成長を実現できた」という。おかげで9月には、米本社の会長兼最高経営責任者(CEO)のJohn Chambers氏から「Chairman's Country Award」を表彰されたとしている。
平井氏は2012年の事業戦略を展開する上で、日本を含めたIT市場が「爆発的変化を遂げている」と説明している。具体的な以下のような数値を挙げている。
- ネットワークに接続される端末の数は3億7300万台から、2015年に7億2700万台に
- モバイルデータのトラフィックは2015年に現在の14倍に
- 2015年にコンシューマーインターネットトラフィックの59%がビデオに
- 1人が持つネットワーク端末の平均は2010年で2.8台、2015年には5.4台に
- 76%の企業が2012年までにプライベートクラウド移行に関心あり
こうした背景を踏まえつつ、平井氏はビジネスの現場からの要望が変化していることを指摘。その変化とはモバイル、ソーシャル、ビジュアル、バーチャルという4つのトレンドだ。モバイルはどこからでも、あらゆる端末でコラボレーションしたいというものであり、ソーシャルは社内の専門家と連携することでナレッジを共有、あるいは企業外の顧客からの要望にプロアクティブに対応するということを指している。ビジュアルは、どこでもリアルタイムに高解像度映像でやり取りをして、プロセスを進めるという状況であり、バーチャルは、仮想化基盤を活用して効率化を進めることを指している。
![写真](/storage/2011/11/02/5e8b22df384fac52ca1aa38da3881a0f/111102_cisco_1.jpg)
そうした流れから平井氏は、企業の新しいビジネスをけん引できるものとしてビジネステクノロジが大きなキーワードになると説明している。平井氏が言うところのビジネステクノロジは、「製品や技術だけで企業のビジネスを展開していくものではなく、製品や技術を導入する前の上流から考える」ことで新しいビジネスを引っ張っていくものと説明している。
「ビジネステクノロジは効率性を分母にして生産性を分子にして、それにイノベーションをかけたものと言える」(平井氏)
ビジネステクノロジのの象徴として挙げるのがパーベイシブビデオ、インテリジェントネットワーク、クラウドサービス、Virtual eXperience Infrastructure(VXI)の4つだ。パーベイシブビデオは、IP電話やビデオチャットなどの1対1、デジタルサイネージなどによる1対多、ウェブ会議システム「WebEx」やテレプレゼンスを中心にした多対多、これらのコミュニケーションには映像をベースに双方向でやり取りされるとともに、すべてが統合されるというものだ。
インテリジェントネットワークは、同社が提供する高品質な映像配信などの技術を指したものであり、エンドユーザーに体感品質を提供できる仕組みなどをまとめたものだ。シスコは12月から「Cisco Intelligent Automation for Cloud(CIAC)」と呼ばれるソフトウェアを提供する。CIACはサーバや仮想マシン、ネットワーク、ストレージで構成されるハードウェア群をプライベートクラウド用に構成、自動化、運用などを管理するというソフトウェアだ。これが平井氏の言うクラウドだ。
最後のVXIは、サーバが格納されるデータセンターからネットワーク、クライアントマシンまでのすべてを仮想化しようというものだ。すでにシスコはIAサーバ「Unified Computing System(UCS)」やパートナー各社のハイパーバイザなどでデータセンターの仮想化展開を進めている。
同社が提供するネットワーク技術は仮想化技術に対応したものであり、さらに仮想デスクトップ基盤(VDI)などでクライアントマシンを仮想化して、どんな場所からもどんな端末からもシステムにアクセスできるようになるという状態を指している。このVXIについて平井氏は、ヴイエムウェアやEMCジャパンと提携しながら提供する「Vblock」と同様に、パートナー各社とのアライアンスで進めたいとの考えを明らかにしている。
平井氏は、こうしたビジネステクノロジの企業への導入に促すために、コンサルティングを提供することを明らかにしている。そのコンサルティングでは、シスコが自ら経験してきたノウハウを「上流から提供していきたい」と話している。